古献「イザリネク=ウェレセリアーミラなる魔女の件」

ウェレセリアーミラ
"魔"術において卓越した力を持つ一族。その起源は不明だが、ウェレセリアーミラの一族は不老長寿であることから人間ではないと思われる。その桁外れの能力を世界に(表舞台にも裏舞台にも)知らしめたのは、霊人皇の時代イザリネク=ウェレセリアーミラという人物。イザリネクは幼き頃よりその美しさと桁外れの魔術の才能で周囲よりの羨望を一身に集めていた。が、性格には難ありで、とてつもなく我が強く、奔放高慢、感情重視であったと言われる。しかしある面では恐ろしく読みが深く、その深謀遠慮で物事と時代の先を"視"通した策を次々と打ち、当時はその行動の理由がわからなかった者も、やがて時を経てからその結果を見て納得し、そしてその未来を見るがごとくの先見性に恐怖したという。(ゲル○ンドラ+○ーザのよーな人だった)。性格、魔術の規模、その力の"源"とも常識外れであるがゆえに、"魔女"の名を世界に轟かせた。表では、大陸に恐怖を撒き散らした真魔戦争の落し子、狂った"霊魔獣"を葬り去り人々を驚かせ、その裏では霊人皇にそれを始末する代わりに霊人皇の持つ歪みの構造美を持つ"矛"をよこせと取引を持ちかけたりしてVIP連中を驚愕させたり。(さすがにイザリネクも霊人皇によこせなとどいう口の利き方はしない。逆鱗に触れれば一瞬で滅魂させられるのがわかっているから。もっとも霊人皇もそんな口の聞き方をされたからといって感情を乱すほど器は小さくはない。ただ笑うだけだが。余談だが、イザリネクの性格だとすまし顔タイプに見える帝エイクリューネは気にいらない・・・はずなのだが、なぜかイザリネクはエイクリューネを嫌ってはいない)

(霊人皇十二閣、スチュアーデの塔より、遥か遠くまで広がる緑の大地を眺め)
エイクリューネ「・・・力とは、かくも無力なのですね。心一つ救うことも、出来ないなど・・・」
(手にした、ヒビの入った紅き精泪石に眼差しを落とす。輝きを失いもはや霊命の尽きたその塊に、透明な雫が落ちる)

(帝の後姿を見つめ)
イザリネク「どうしてあんなヤツの為に、貴女が涙を流すのか私には理解できないけど・・・貴女のそんなところ、嫌いじゃないわよ」
(それだけ言うと、踵を返し、白亜の回廊を去っていく)



 霊人皇の死後もそのイザリネクの逸話が絶えることはなく、遥か彼方までひしめく"蝕変蟲"の軍勢を"金色の聖光"で視界一面、一瞬にして消滅浄化させたこともあると伝えられている



眼前には、瘴気を放ち空間すら腐食させかねないほどの密度でひしめく蝕変蟲の群れ。遥か地平まで埋め尽くすそれらが大地を溶かしながら、轟音響かせる濁流となって迫る。

ベレル=フィレアン「よくもまあ、あれだけ増えたものよ。"吸霊粘膜"に"復元増殖細胞"タイプか、あれらをいちいち消去していくのは老体には骨だな。街一つですむなら、そちらのほうが楽でよい」

イザリネク「200歳にも満たない"フィレアン"一族の若造が何言ってんの。所詮、ザコの群れじゃない」
複雑な印と呪を組むと、イザリネクの右手がまばゆい金色の光を纏い始める。光は"白い"波動を生みそれが凝縮されていく。一瞬で蝕変蟲の奔流の眼前へ移動すると、腰溜めにした右腕の拳を前方へ向かって突き上げる。右拳から放たれた"黄金"と"白銀"の光が視界一面を覆う波動となって次々と蝕変蟲を飲み込み、消滅浄化していく。地平の果てまでの蝕変蟲の群れ、完全消滅。

ベレル=フィレアン「ほぉ・・・"極天"まで到達していたのか・・・まさに人ならざる"魔女"だな」
イザリネク「(ベレルを振り返り、ニヤリと凄艶な笑みを浮かべる)」



これもある言い伝え
かの "左腕の御剣"と称され神の域とまで言われたヴェルネス=ゴートの全精力を込めた一撃を受け(ヴェルネスの剣は魂を削るとまで言われ、その能力を解放した一撃にはかつて誰も耐えたものはいない)、あまつさえ腹部に一撃を叩き込むという離れ技をやってのける。

ヴェルネスの持つ大剣の刃が、妖しい碧色の輝きから黒い陽炎へと変化していく
同時に、ヴェルネスの体から生命力そのものが陽炎へと"吸われて"いく。陽炎の周りの空間が歪み、消滅していく。
イザリネク「それが噂の"碧刀―罪滅―"ね。一度その正体、見てみたかったのよ」
ヴェルネス「(剣の魔力に抵抗しながら)"魔女"よ。逝くが、よい・・・」
"瞬き"の間もなく、イザリネクの間合いを"侵食"。驚愕の表情を浮かべるより速く、"陽炎"が空間を"疾る"。イザリネクの周りに張り巡らされた幾多もの永続型魔法障壁を易々と消滅させその胴体を両断。イザリネクの膨大な生命力、精神力、そして魂を"喰らい"、陽炎が爆発的に膨れ上がる。大地に転がる二つの塊。
命の極限までの生命力を吸われヴェルネスは大剣を振るったまま、イザリネクを見下ろし立ち尽くす。
(ヴェルネスの背後から)「・・・なるほど、この世界に在らざる"異業"の存在だったとはね」
ヴェルネス「!!(後ろを振り返る)」
ドンッ。その腹に拳の一撃がめり込む。生命力のほとんどを失ってしたヴェルネスはその一撃で大地へ沈む。暗転する意識の中で見たのは確かに魂までも"喰らった"はずのイザリネクの姿。
イザリネク「これだけの一撃が"味わえた"なら、"魂一つ"など、安いもの・・・」
そしてヴェルネスの意識は闇に消える。

そして、時は経ちジェネディスとルーンの剣たちとの死闘の最中。ジェネディスを空間ごと葬るため六人の魔導師(ルーンの剣)がそれぞれ魂を削り、最下層"精霊禁門"を開き、六道凶乱衝獄―ファナティック・カーニバル―を放とうとした時。


同時刻
「・・・裁きもたらす光の・・・」
魔導師の背後にイザリネク出現。そのまま手にした"矛"を突き立てる。魔導師の張り巡らせている永久型多重魔法障壁を容易く貫き、それは心臓を貫く。
イザリネク「さよなら、色男さん」
心臓を"矛"に体を貫かれたまま、なんと魔導師は振り返る。血を吐きながら震えるその手をイザリネクの首に伸ばす
イザリネク「あらぁ〜。寂しいのね」
微笑み、イザリネクは男に口づけ。そのまま"生命力""精神力"を吸精。
イザリネク「おやすみなさい、坊や。いい悪夢―ゆめ―を」


これは同時刻
「・・・これは 広がりし空の領域・・・」
眼前に出現したイザリネクを見て魔導師は詠唱を止める。
魔導師「来るとは思っていた」
イザリネク「そう?」
魔導師「俺を止めても、残りの者が呪文を完成させるぞ。六門すべてが必要な呪
文でないことは知っていよう。今からでは他の"門"には間に合わん」
イザリネク「(笑みを浮かべて)どうかしらね」
魔導師「決着をつけよう」
イザリネク「勝てないってわかっているのに・・・やるのね」
魔導師「・・・」
イザリネク「・・・痛みなく、一瞬で終らせてあげるわ」
イザリネクの体が、黄金色の淡い光を放ち始める。


これも同時刻
「・・・猛き炎の源たる・・・・」
イザリネク「はぁ〜い」
魔導師の目の前に小馬鹿な態度で出現。魔導師、なんと禁呪の詠唱をしながら両手のひらに"口"を生み出し、獄炎魔法ダブルで発動。黒い炎が螺旋を描きイザリネクに襲いかかる。がその眼前で跳ね返る。そのまま魔導師の巨体を焼き尽くす。
イザリネク「剣でも魔法でも破壊不可能と言われたあなたの体を"焼く"なんて、さ〜すがメギドね」


これも同時刻
「・・・命育みし蒼の・・・」
魔導師の背後にイザリネク出現。と、その瞬間詠唱を中断して魔導師は振り返る。
イザリネク「いいの?呪文の詠唱止めちゃって」
魔導師「あなたを葬るのが先です」
イザリネク「それはそれは」
魔導師、印を結び両手の平を合わす。そしてその重ねている手のひらをズラす。
イザリネク「!!」
咄嗟に危険を感じ"転移"。数m横に出現するも、右腕の肘から先が刃物で切断されたように落ちる。
イザリネク「・・・障壁無視とはね・・・その"呪文"、まさか使えるものがいたとは・・・」
魔導師「この"呪文"からは逃げられません」
それを聞き、嘲笑うとイザリネク、"無霊域―ニュートラライズ―"発動。
青ざめる魔導師。
イザリネク「さぁ、非力な女同士、野蛮な殴り合いでもしましょうか・・・」
    

これも同時刻
「・・・大地の恵みと災いを・・・」
イザリネク、魔導師の前に出現。魔導師、詠唱を中断。
イザリネク「あなた、ずっと気に入らなかったのよね」
魔導師「わたくしも、あなたの振る舞いには辟易しておりました。下劣な魔女風情が霊人皇様の居城に上がるだけでなく、身の程をわきまえぬ言動。なにゆえ霊人皇様があのような無礼を許されていたのか理解しかねます。加えて、帝様もそれを咎めることなく自らの側に寄せて"言葉"を交わすとは。まったく、お立場をわきまえておられるのでしょうか。ジェネディスといい、あなたといい、やはり"人間"ごときが霊人皇様のお側に・・・」
イザリネク「(ピクッとこめかみが震える)よく囀る口ね・・・」
魔導師「だったらどうします?実力でふさいで見せますか?ご存知ですよね、私が精霊九門を極めた魔導師であること。あなたごときに、それが出来るかしら?」
イザリネク「極めた、ね・・・(口元をゆがめて)それは楽しみだわ」


これも同時刻
 「・・・絶えることなき闇の息吹・・」
魔導師の眼前に出現するや、黒の"陽炎"を纏った右手で魔導師の左腕を"削る"。と、そこにあったはずの魔導師の左腕が消滅。
魔導師「・・・来おったか、魔女めが」
イザリネク「あなたに言われたくはないわね、"蝕魔"さん」
魔導師、笑う。
魔導師「知っておったか。ならばいまさら隠す必要もないのう。この体もそろそろ限界、ちょうど新しい体を探しておったところ。生命力に満ちた若いおなごの身体、さぞかし心地よかろうて」
イザリネク「魂の安らぎを失った哀れな"存在"・・・(ちらりとある方角に目を向け)・・・"あなた"の祈魂―いのり―はまだ、世界に届きそうにないわね・・・」
イザリネク、黒の"陽炎"を纏った右手に続き、左手に金の"燐光"を纏わせる。



そして
ジェネディス、"剣憑き"マリュフとの"月が満ち、欠けるまで"の、命と心と魂
を削り合う"決斗"を制するものの、その左半身を"消滅"させられる。手にし
た3m近い異形の"大剣"が淡い光を放ち身体を覆っている。イザリネク、その
"谷"に登場。


ジェネディス「・・・よう」
イザリネク「すごいわね、あなた・・・その状態でも生きてるのね」
ジェネディス「まぁな・・・もっとも、ヤツにやられたからな、しばらくは"蘇ら"ねぇが」
イザリネク「しかし、よく勝てたわね。あの"羅刹"に」
ジェネディス「このザマだがな・・・ところで、俺のいないとこでなにやらやってくれていたようだが」
イザリネク「ん?・・・ああ、まあね」
ジェネディス「頼んだ覚えはねーぜ?」
イザリネク「あんたとは関係ないわよ。私が趣味でやっただけだから」
ジェネディス「あいかわらず、わかんねーヤツだな。趣味で六人の"ルーンの剣"
を相手にするかよ。やつらみな、"神霊殺し"なんだぜ」
イザリネク「あなたに惚れているのかもよ?」
ジェネディス「フッ・・・そいつだけは御免こうむるよ」
イザリネク「あなたはここで"死ぬ"運命ではなかったと、私には"視"えたか
ら。あなたはこれから、世界を"支え"、そして"滅ぼす"大きな力の"始まりと
なる。世界を支える積石たる"御柱=三柱"として・・・」
ジェネディス「なるほど、死ぬ運命でなかったと"見えた"わけね・・・ところ
で、一つ聞きたい。"禁界六門"、ほとんど同時に消滅したのを感じた。ましてあ
いては"ルーンの剣"。お前一人ではなし得ない。どうやった?」
イザリネク「さあ、どうやったんでしょうね?」
(イザリネク、ジェネディスの眼前に顔を寄せてじっと見つめる)
イザリネク「あなたが、わたしのものになるっていうなら、教えてもいいわよ。
それとも、その"不思議な"大剣をくれる?」
ジェネディス「(残っている右肩をすくめて)教えてくれなくていいぜ」
イザリネク「(笑って)その半身、どれくらいで"蘇る"の?」
ジェネディス「さあなぁ・・・速ければ一週間ってとこか」
イザリネク「そう。じゃあ、回復するまでの間、付き合ってあげる」
(そう言って、イザリネクはジェネディスの右横にすわる)
ジェネディス「おい、いいのかよ」
イザリネク「マリュフの一撃をあえてかわさず、そのまま一撃を踏み込んだ時の
あなた、格好よかったわよ」
ジェネディス「!?(バッとイザリネクの方を見る)」
(と、その唇にイザリネクは軽く口づけをする)
イザリネク「ご褒美よ、ボク」
ジェネディス「・・・・子供扱いかよ」
イザリネクは、艶のある微笑を浮かべた。。

イザリネク=ウェレセリアーミラに関する逸話はまだまだ存在するが、ひとまずはこの辺りで。イザリネクの以後、ウェレセリアーミラの名を持つ者は魔導師として数多くのエピソードを残している。そして現在、ウェレセリアーミラの名を継ぐのは、姉リジェリア=ウェレセリアーミラ、妹ジェネリラ=ウェレセリアーミラである。

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