終章『Never Ending Roll』

無の星神 「我が名はイリフィトラ=アウター=サディ
絶対神アホンダウラの父であり 神々の王 そのひとである
ミラン=セル
おまえには何もしないというのが楽しいかもしれん
寿命を待て
おまえの老いさらばえた 老人の姿というのが見たくてなあ
ハ ン サ ム ボ ー イ? 
そして 無の星神の名において命ずる
おまえは必ず女にフラれる情けない男にしてやる
どうだ? つらいだろう?」
ミラン 「く…みんながんばろう! 俺の為にみんながんばってくれ!(笑)」

キャロル 「我が血に連なるものよ 集えこの虚無の時空へと」

平晏飛燕 「あっちゃー…この世は見捨てたよ」
ミラン 「そんなことが許されると思っているのか!」
天喰狼 「だいたい もはや私達を扱うものがこの世にはいない誰も認めたくないねー」
ミラン 「地呑獅刀 この前私を認めたな」
地呑獅 「そりゃ おまえだからだ」
ミラン 「天喰狼刀 頼む この通りだ!(頭を下げる)」
天喰狼 「そういう 卑屈な態度は嫌いだ」


「ならば…現世よすべて滅っしなさい…」


キャロル 「聖剣の力を一つに! その剣の力を上げれるだけ上げるんだ!」
集った剣の力がアホンダウラの手に
しかし その手の中で大きすぎる剣の力が暴走ぎみにかたかたと震える

−集束−

天喰狼&地呑獅 「おまえリュークになれるか?」「おまえハイネストになれるか? なれねば殺す」
ミラン 「やるしかないだろう! なんでもやってやらぁ! ただしリュークはリューク ハイネストはハイネスト 俺は俺だ」
天喰狼 「認めなーい! 完全になれ」
ミラン 「…完全になってやる!」
地呑獅「そこまで言うのなら 汝に“世界”の剣を与えん」

−剣王−

ミラン 「アホンダウラよ この剣はどこにいてもどの世界でも剣は通じる
よって アホンダウラの封印を 今 解いてやろう」
ミランが振り下ろすと同時に“世界”が疾る! 
が 何もおこらない
セイバー 「そういうことを させるかよ…させやしねえ…」
ミラン 「ど どういうことだ!?」
セイバー 「ただ一つ 俺は世界なんかより 一人の女の方が大事でな」
ミラン 「ひとりの女?」
セイバー 「俺はリーゲンを倒した リーゲンとエヴァンスの力をすべてうけついだ
そして 俺の最もアホンダウラに近い身体潜在能力を用いて
そのパワーを “世界” とかろうじて 同霊格 にまでもっていくことが出来る
自分の寿霊命を 削り 削り ながら」
ミラン 「そこまでして…その女とは?」
セイバー 「私よりかよわき存在 我が愛しのシリア=テルティース」
シリア 「あ…(言葉を失う)」
セイバー 「唯一の私の汚点 それは自分の中に眠っていた
アホンダウラが最後の封印を 彼女に託してしまったことだ」


−愛情−

セイバー 「これで 大魔王アホンダウラ自身の力もいただいた」

がセイバーの至る全身より 霊氣 精脈 が放出奔流していく

セイバー 「じ 次元…と 時刻(とき)の抑制も
げっ 限界・・・ガッ!!


グゥゥゥ








!!



−融合 そして 崩解−


シリア 「あ…あ…」

−当惑−

ミラン 「シリアの馬鹿! はっきりしろ おまえ!」

−叱責−

キャロル 「(動けないクライスと マスターサモンイントの肩を叩いて前に出る)
さがってな 動けないヤツに用はない」
ルーティ 「一緒に行きましょう」
キャロル 「ふっ やっぱり最後に戦うのは昔からの友だな」

−友情−

ミラン 「シリア 俺に攻撃をあわせてくれないか」

シリア 「…まかせてちょうだい」

−協力−

ヴェリア「…俺もやってやろうじゃないか
暗王としてではなく ローラ=ドーロ 一個人として!」

−奮起−

ミラン 「こうなったら破滅してもいい! 背中に背負ったティレムマクロンも取り込んでや
る!」

ヴェリア 「マスター=サモンイントよ 俺の身体に取り込まれんか」
マスター=サモンイント 「…OK」

−決断−
ミラン 「みんな いくぞ!」

キャロル 「虚現王の力により 命じるあらゆる虚無の具現を阻止せよ!」

ルーティ 「竜刃襲破斬 そして 留華流漣斬!」


ミラン 「考えてみれば こうして貴方と協力するのは初めてじゃないですか」
シリア 「そうね」
ミラン 「これが初めてで 最後にしたいものですね…飛燕 燕返し!」

シリア 「いでよ 九つの天龍達 我が最後の召喚に応じよ!」

ヴェリア 「魔境暗霊怨滅(フォウレェン=ドゥーラス)!」

ミラン 「(ふと)これシリアに向けた方がよかったな…」

−邪心−

キャロル 「敗北を認めたらどうですか?」
無の神 「まだ私は戦えるぞ…」
キャロル 「負け惜しみもそれぐらいにしておけば…次の一撃で勝負がつきますよ」
無の神 「(ぼそっと)おまえに力を託したいんだが 第二の虚無の王とならないか…」
キャロル 「…私に何を望む?」
無の神 「それはおまえの使い方次第だ…」
そして イリフィトラ=アウター=サディは 
絶対神の父親にして神々の長である無の神は倒れた
しかし 戻るべき大陸 ウェスト=ディストラクテスはすでに消滅してしまっていた

そして…
「セイバー…セイバーっ!!」
シリアがはじかれた様に セイバーの元へと駆け出す
再び倒れ込み ぴくりともセイバーのその身体は動かなくなっていた
虚の空間 上 下 左 右 もわからないその中を
シリアはただ セイバーだけを求めて駆けていた
いままで 自分の心の中にあった感情が
どうしても言えなかった言葉が
あふれんばかりにこみ上げてくる
今なら自分の氣持ちに素直になれる
「死んじゃいやだ…死なないでセイバー…」
しか しシリアのあせる氣持ちとは裏腹に
セイバーとの距離はいつまでたっても狭まらない
ようやくそれに氣付いたシリアは周囲を見渡し
ここが通常の次元でないこと
セイバーが倒れているのが次元の別の狭間だということを思いだした
だからといってそのまま何もせずに入られるほど
シリアは平静さを保ってはいられなかった
無駄と知りつつ必死でセイバーに近づこうとする
その時セイバーの手がほんの僅かに動いたかと思うと
次の瞬間にその手には一本の異形な形をしたスタッフが握られていた
消えそうな声でなにやら一言二言呟きをもらすと
セイバーは弱々しい動きでそれをシリアに向かって投じる
投げられたそれが途中ゆらぎを見せたかと思うと時空を越え
次の瞬間にはシリアの眼前へと現れた
「この杖は…」
セイバーがまだ生きていることに安堵し とりあえずシリアはその杖を手にとる
「その杖を…使え…」
弱々しいセイバーの心話が杖を伝ってシリアの脳裏に伝わって来る
迷うことはなかった即座に杖をかざしシリアは祈り始める
「…」
シリアのその様子を無言で見ていたキャロルは
何かを思ったらしく無の神より受け継いだその力で
虚の次元に働きかけた
完全にキャロルの影響下にはいった虚の空間は
キャロルの意志に応じてセイバーの身体を一瞬にしてシリアの側へと運んだ
杖が力を発動させたのか
それとも別の力が働いたのかシリアには判らなかったが
とにかく杖を放り出して シリアは慌ててセイバーの側に屈みこんだ

「セイバー!」
セイバーの側に駆け寄ろうとするミランを キャロルが一瞥するする
と そのミランを初めとして
ヴェリア
ルーティ
そしてキャロルも 一瞬にしてシリアの周りに移動していた
「いったいどうなってるんだ? この空間」
自分の身におこった不思議な現象にヴェリアは首をひねる
「セイバー しっかりしてよ! ねえ 目をあけて!」
不思議そうな顔をしていたミランも
シリアの必死な声でセイバーの様子へ目を移す
外傷はまったくといっていいほど無いのに
セイバーは今だに目覚める様子を見せない
「精神の疲れ…か?」
考えられる要素をいくつか頭に思い描きつつミランが呟いた
「いや きっとお姫様のくちづけが必要なんでしょう」
ルーティが冗談ともつかない口調で言う
しかし 誰もが即座にこれを否定できなかったのは事実である
「まいったなあ…」
ミランがぽりぽりと頭をかきながら困った声を上げた
それ以上に当惑しているのがシリアである
どうすればセイバーが目覚めるのか何もできない
自分がこの時ほど歯がゆかったことはなかった
「“世界”で無理やりおこすか…」
何氣なく言った ミランのその一言にしかしシリアはふとひらめくものがあった
「そうだ神器なら…!」
突然 立ち上がるとシリアは目を閉じて念じた
その志念に応えるかのように
自分の身体から赤いオーラがわきあがり
それが渦を巻くように シリアの眼前で中型の鳥の形をとり始めた
『私の呼びかけに答えて 凰朱雀刀』
シリアの思念が聖獣化した凰朱雀刀の心へと送られる
オーラのままその形をとどめる凰朱雀刀が
シリアの脳裏にだけ響く澄んだ声で語りかえす
『我々が剣の王に語りかけよ そしてこの者の持つ創られた剣
彼ら二つの剣を用いれば立ち上がる力ぐらいは得られるのではないか
“世界”の絶対的な破壊の力を 創られた剣に秘められた烈帝ファイナルの力もて
再生の力にねじ曲げれば わずかな力が得られるだろう
もっともそれをおこなうと烈帝ファイナルはしばらく使えなくなるがな
いくら“世界”がダメージを抑えたところで
烈帝ファイナルたった一つでは荷が重すぎるからな
それでも立ち上がるだけの力が欲しいのだろう? 
振り下ろした“世界”を創られた剣で受け止めろ』
『ありがとう 凰朱雀刀』
シリアがふっと瞼を上げると オーラの鳥が弾け飛び
そこには小剣が突き立てられていた
その凰朱雀刀を引き抜き腰に帯剣すると
セイバーが背に負っている創られた剣のつかへ手をかける
「持てるのか?」
マッド=ドラゴンをベースに 幾つもの聖剣を融合させた3米以上の長さを持つ異形の剣と
シリアの細腕を見比べた
キャロルが疑問を挟むが ミランが軽く言い放つ
「まあ 百瓲(トン)ハンマーが持てるくらいだから」
ミランの言葉通り シリアは創られた剣を持ち上げると
それを片手でかざしたままミランの方へくるりと振り向く
シリアにじっと見つめられ ビクッ と恐ろしげに身を震わせるミラン
手の中ではおさえた“世界”がかたかたと音を立てている
「こ この震えは剣を持った震えじゃないな…」
「ミラン…お願い 力を貸してください」
「へ?」
なんと驚いたことに シリアはミランに向かって頭を下げたのだ
「シリアが頭を下げるなんて…」
とキャロルの驚きの声
「世界の終わりだな…」
どヴェリア
「終わったじゃないか!」
そこにミランが鋭いつっこみをいれる
「そっか! 終わったなぁ だから シリアが頭を下げるのか」
「いや これは夢だ ぐう ぐう ぐう…」
現実逃避するルーティ
しか しシリアだけはそんな周りの状況は一切目に入らないのか
一人 真剣な表情のまま下げた頭を上げようとしない
「ミランお願い…力を貸して下さい」
ミランもシリアのあまりに意外で
そしてせっぱ詰まった態度に ようやく真面目な表情になる
「…どういう風に?」
「“世界”の絶対的な力を この創られた剣で再生のエネルギーに変換して
それをセイバーに送り込む」
「ま やってみよう セイバーのためじゃない
セイバーの中に眠るフラッシュ=バックの為に
奴に 聞ききたい事もがあるからな」
「それでもいいわ 力を貸してもらえるなら」
心底うれしそうな声をあげて シリアは顔を上げる
その時 ミランの持つ“世界”を構築する一本 
光の天喰狼刀の意志が
自然とミランの中に流れてきた
『獅よ 極力 力を抑えろよ 一番おまえがどう猛なんだからな』
それに闇の地呑獅刀が応える
『なぁに その為に 飛燕 がいるんじゃないか』
「いいか シリア」
ミランが“世界”を上段に振り上げ セイバーの横に立つ
その反対側に シリアは肩膝をついて屈み込み
創られた剣をしっかりと両手で支え セイバーの身体の上にかざす
「死ねぃセイバー!…なんて ね」
ガギィィィン!
振り下ろした“世界”と創られた剣が激しく激突交錯し
すさまじいエネルギーが光の波動となって
セイバーの身体に そして周囲にもほとばしる再生の力が
あっと言う間に空間をおおい尽くす
光がおさまった後 意識を取り戻したセイバーはたよりなげに立ち上がり
そのままシリアへとすがってくるが
くっ と膝をつき倒れ込む
そのセイバーの身体をシリアはしっかりと受け止めた
「シリア…痛いよ身体が」
セイバーの口から漏れた
その呟きまぎれもないセイバーの声に
シリアは思わずその身体を ぎゅっ と強く抱きしめていた
「無様なものだな セイバーよ」
キャロルの意地悪い一言も
しかし すでにセイバーとシリアにはまったく聞こえていなかった
ただ お互いの存在だけが その感触だけが限りなくいとおしく
そして暖かく安心できるものに感じられているだけだった
疲れた表情のセイバーは そのままシリアに身体を預けたまま瞼を閉じる
シリアの瞳からは耐えきれず ぽろぽろと大粒の涙がとめどもなく流れ落ちていた
「二人ともどの世界に行きたいか?…ああ 聞いてない 
もう いいんだいいんだ 潰してやる次元なんて」
ぶつぶつ一人でいじけるキャロル
今度はミランが声をかける 「シリア…あ 泣きふせってる
あのセイバー お楽しみ中の所 すいませんが…」
「どちらかが一つになれば倒せるよ 倒せるけどもう二度と会えない」
瞼を閉じたままセイバーは疲れた口調でぽつりと言う
シリアはその言葉にあからさまに動揺していた
「どういうこと? 倒せるって…それに二度と会えないなんて私 絶対にイヤ!」
セイバーはゆっくりと瞳をあけ 涙に濡れたシリアの顔を見つめた
「ああ 完全に二人の世界に入ってる」
ミランも無視されている
「別れを告げる必要はない」
声を発したのはいつの間にか立ち直ったキャロルだった
そばまで歩み寄り疲れた様子のセイバーを見つめて言う
「無の神は死んだのだ」
「…実はセイバーには シリアしか見えていないんじゃない?」
格好つけて言うキャロルの後ろで ルーティが呟いた
ちょっと動揺を見せるキャロル
「そ それは困る 浮いてしまうじゃないか」
だが どうやらその心配はなかった様だ
シリアの顔から視線をずらしセイバーは キャロルを見る
そして ふっ と笑みを浮かべる
しかし それはどこか哀しい微笑みだった
セイバーは声をださずに心話でキャロルへと語りかける
『まだ人としての感情があるみたいだね…』
キャロルはセイバーの瞳から視線を外さない
キャロルも心話で応じる
『どこに行きたい? 彼女と暮らすために』
『私は創造神として おまえを倒さなければならない』
キャロルの視線が 一瞬 シリアへと移る が すぐにセイバーへと戻る
『それが出来るのか? 彼女が好きなんだろ?』
わざと最後の部分を嫌味ったらしく強調する
セイバーは心底疲れているのか それには何も応えなかった
『ま もっともおまえが手を下す必要はない』
そして キャロルの最後のその心話も 哀しい響きを含んでいた
キャロルはミランをゆっくりと見据え低く呟く
「勝負だ」
シリアが投げ捨てた創られた剣をキャロルは拾い上げ 二 三度振ってみる
自分に十分扱えることを確認した上で それをミランに向けて構える
無数の聖剣達によって織りなされる強大な複合の霊力が
剣の内側だけには抑えきれず 刃から溢れ出るのが誰にも感じ取れた
キャロルはセイバーに眼差しを送り心の中で呟く
『さらばだ セイバー シリアと幸せにな』
そして その後に一通りみんなを見回し
『なかなか楽しかったよ みんな…』
再び ミランを見据える
ミランは無言で“世界”を構え直す
「ミラン そう言えばおまえとの決着も まだついていなかったな」
さらにクライス達をも見渡し 剣を片手で持ってそちらに突き出す
「死にたいヤツは まとめてかかってこい…」
すでに死は覚悟のうえだった
キャロルはここで自らを滅ぼすことを望んでいたのだ
セイバーとシリアの幸せのために
剣をかざし駆け寄るクライスやブンブンオーを見ながら キャロルは一つ大きく呼吸をする
そして自らの一撃を本当に最期の一撃を放つ! 
力の波動は時空を裂き ブンブンオーを直撃した
桁外れのエネルギーにブンブナオーの身体は跡形もなく消し飛んでいた
その間に距離をつめた クライスの剣がきらめきを見せて キャロルを切り裂く
あまんじてキャロルはそれを受けた
しかし 所詮 武器の霊格が弱すぎる キャロルには殆どダメージとなってはいなかった
とどめは…キャロルは剣をかざし ミランへと向かった
ミランも“世界”を手に キャロルへと疾る

ズブッ…

勝負は一瞬一太刀で決まっていた
切っ先は大きく背中へと抜けていた
刀身にまとわりついた鮮血がぽたぽたと雫を滴らせる
ミランの持つ“世界”は キャロルの胸を深々と貫いていた
「なぜ おまえが…」
ミランにはキャロルが手加減をしたことがわかっていた
キャロルが完全に剣の力を使っていれば
こんなあっけない結末になってはいなかったのに
キャロルはミランを見て力なく笑うと 左手を震えながら上に差し上げる
空間に裂け目が生じ 次元の通路がだんだんと開かれる
キャロルは最期の力で ミラン達がここから脱出する裂け目をつくったのだった
「キャロ…」
しかし その問いがすでに無駄なものになったことをミランは悟った
キャロルはすでにこと切れていたのだった
その命の灯が消えると同時に 肉体は砂のように崩れはじめ
あっという間に塵と化していく
創られた剣だけがカランとその場に転がった
そして 沈黙…


「クライス これからもし何もする氣がないんなら ついてこないか」
ヴェリアが いやローラ=ドーロが その沈黙を撃ち破って 氣の抜けているラカンヴァネラに言う
「それは 主に聞いてくれ」
らしくない覇氣の失せた声だった 僅かに首をひねり新たなる自分の主である魔王を見やる
ローラ=ドーロもそちらに視線を向ける
視線の先にはシリアの肩に支えられて何とか立っているセイバーがいた
「好きにするがよい」
視線を向けたクライスに 魔王の力を受け継いだセイバーは こくりとうなづいた
「どうせおまえも俺も 人として生まれた者ではない異物にしかすぎんが それなりの帰るところはある 
私の故郷 氷と暗のみが渦巻く世界 この世ならざる世界だが」
ローラ=ドーロの言葉に クライスはひと呼吸おいてぽつりと呟いた
「それもいいが…探すか?クィーンを」
その言葉にローラ=ドーロが僅かに表情を動かす
「アーデレントとしての記憶が戻ったか…?」
「阿呆ぅ 俺は、俺だ。最初から持っとるよ…探すか 我らが主クィーンを…」
ラカンヴァネラの顔に次第に覇氣が蘇って来る
しかし それはクライスとしての邪悪な魔人の氣ではなく
第二貴族長輝将軍としての あの人間味ある昔のラカンパネラの氣だった
ローラ=ドーロ と ラカンヴァネラは顔を見合わせ
二人はキャロルの開いた次元の裂け目へと足を向けた
彼らにとってはここからが新しい戦いなのだ いつ達成できるかもわからない
しかし必ず達成するであろう 永い戦いの始まり
次元の裂け目へと消えていく二人を見ながら
ドレイラはしばらく戸惑っていたが くるり とシリアを見
「貴方も眠りについたほうがいいんじゃないですか? 
貴方達の いえ貴方の戦いはもう終わったんですから」
それだけ言うと消えていく二人を追って 次元の狭間へとかけだした
長き戦いに対するそのいたわりの言葉を シリアはしっかりと心に刻みつけた
おそらくドレイラともう二度とあうことはないだろう
これが仲間の最後の言葉となるはずだ
「ローラ=ドーロさん 待ってー」
ローラ=ドーロ達の後を追って ドレイラも時空の裂け目へと消えていった
「さぁて 俺はあの頃とあの時代が好きだから 過去に戻るか」
三人が消えていった次元の裂け目をじっと見ていたミランがわざと間の抜けた声をあげる
「戻れるのか」
静かなセイバーの問いかけに ミランは肩に担いだ“世界”を目で示す
「この剣は 時空 時間 次元 すべてを切れる
だから 俺は生まれた時間に戻って この剣でその原因を断ち切ろうと思う
セイバー約束通り あの時の話を聞かせて貰おうか
いま あいつ は いつの時代でどこにいる」
真摯な眼差しで ミランがセイバーを見る

「自分の目で 確かめてみるがいい」
「…わかった」
“世界”を構え 次元と時間を裂くべく一歩踏み出したミランの背に
セイバーが声をかける
「…おまえには力がいるんだろ?」
「ああ」
セイバーが空いた左腕で転がる創られた剣を指さして その指先をくいっと動かす
と剣はふっと浮き上がり そのまま しゅっ とミランの持つ“世界”へと向かって飛んだ
創られた剣は“世界”と衝突する と 激しい光の波動を周囲に放った
そして創られた剣は“世界”へととり込まれた
「ミラン 先に私を一番戦いが激しかった時代へ飛ばしてちょうだい」
ミランの横に進み出るとルーティがそう言った
「それはかまわんが…」
驚きの表情を浮かべて ミランはルーティを見返した
歴史上 最も戦いの激しかった時代と言えば考えるまでもない しかし…
「ちょーっと キツいんじゃないか?」
「私は虚空雷帝 神々を倒すための裁きの女神…」
ルーティに迷いはなかった 知らず知らずのうちに自分は戦いを求めている
それが虚空雷帝としてのものなのか はたして人間として生まれもった性格なのかはわからない
しかし それはどちらでもいいことだった
剣を友として戦いの中を駆け抜けるのみ
ルーティの眼差しに ミランもその決意を感じ取った
「わかった 神話の時代へこの空間を導け」
創られた剣をもとり込んだ“世界”が 時空 時間 を切り裂き 新たなる別の空洞を開く
その裂け目の先には 歴史上最も戦いの激しかった時代
すなわち幾億年以上の昔 魔王アホンダウラと神々の戦いのあった時代があるはずだった
「この穴からどうぞ」
自らの愛刀である流香に一度軽く手をやるとルーティは
ミランの開いたその裂け目へと歩いていく
その姿が次元の向こうへと消える間際に 一度後ろを振り返って
ミラン セイバー シリアに向かって大きく手を振る
「みなさん 幸運を!」
そして ルーティも自らの望む新たなる旅立ちへと消えていった
その後ろ姿を残った三人は静かに見送った
「おまえ達はどうするんだ?」
ミランがセイバーとシリアを交互に見ながら尋ねる
「それは…」
それだけ言うとシリアはセイバーの顔をじっと見上げた
シリアの顔には今や至福の笑みだけが満面とたたえられていた
もう 自分が望むものは何もない
ただセイバーと一緒にいられるのなら…
セイバーが行くところなら 私はたとえどこにだってついていく
セイバーは疲れた表情で シリアを見 それでも嬉しそうな笑みを浮かべる
「はいはい お熱いですこと じゃあ そろそろ俺も…
元の次元で昔のシリアと追いかけっこでもしておくか」
「ふふ 今となってはなつかしい思い出ね」
シリアが懐かしそうに ぽつりと呟く
いままで死ぬほど散々どつかれてきたことを思いだし
ミランは複雑な表情を浮かべる
それでも再び 時空を裂くべく“世界”を大きく振りかざした
「“世界”よ 我の望む 時間 次元 空間 へと我を導きたまえ」
スウッ…
空間軸 をそして
時間軸を裂き
“世界”が時空に通路を開く
ミランは剣を抱えると 一歩その中へ踏み出す
と そこで足が止まる
『ち ちょっと待て これからまたあの悪夢を見るのか…
しかし セイバーに この剣の力をあそこまで上げてもらったんだ
戻らなきゃひっこみがつかないし 戻ったら戻ったで…』
『はい もう遅い』
不意にセイバーの声が頭に響いたかと思うと
ミランは身体が次元の裂け目に ひっぱり込まれるような感じを受けた
「あああぁぁ ぁぁぁ それじゃあぁ ねぇぇぇぇ 二人ともぉ ぉぉぉぉぉ…」

ミランも 過去の時代へとまだ大陸の存在していた ウェスト=ディストラクテスの世界へと戻っていった
そして 虚無の空間には 疲れきったセイバーとシリアだけが残された
「これから どうするの?」
「疲れた…眠りたい…」
うなだれた頭をもたげ セイバーはシリアの顔を見た
「やっと 俺好みの女になったなぁ…」
それだけ言うと再びゆっくりと瞼を閉じ
眠りに入った
その寝顔はシリアが今までに見たことがないほど
無邪氣で幼さをたたえた表情だった

そして シリアは知った
この孤独にして孤高の戦士はようやく
安らぎの時を得ることが出来たのだということを
「今までずっと 私のことを見守ってくれていたんですものね…」

眠りについた新しき創造の赤子の身体をそっと横たえ
シリアは自分の膝をその枕とする
母の元で眠る子供が見せる信頼に満ちた表情を浮かべるセイバーの
その頬にいとおしげに指を滑らせる
創魂の秘奥術によって自分を蘇らせてくれたときから ずっとセイバーは自分をかばってく
れていたのだ
一緒に大陸中を旅していた時もそうだった
口ではいろいろと文句も言っていたが どこかで必ず自分を支えてくれていた
姿を眩ませた後もそうだ セイバーは一言も言わなかったが シリアは氣付いていた ハルノアの皇帝の間でリアンフルとの戦いになった時
そしてアホンダウラ降魔神軍達に不意打ちを食らった時 セイバーがどこかから自分を助けてくれていたことを
どちらも自分一人の力では生き残れなかったはずだ そして“世界”の剣の時もそうだった
最強無比の力を放つあの剣の威力を殺す為に いったいどれだけ自分を犠牲にしたのだろうか…
スーッ…
再び目頭が熱くなる頬を伝い 透明な雫がセイバーの頬へと数滴滴り落ちた
「ありがとう…セイバー…ゆっくりとおやすみなさい
今度は私が 貴方を見守っていてあげる
私 いつまでもずっと貴方の側にいるから…」
背を屈め そっと唇を重ね合わせる
あたたかく それでいて 心が満たされるような優しい感触
もう何も迷うことはない
ただ この温もりを忘れさえしなければ
もう何も悩むことはない
ただこの温もりだけは偽りなき真実なのだから
そして もう何も疑いはしない
この温もりが 自分を求めていた すべて なのだから…
「大好きよ セイバー…」
それがシリアの 今のすべての想いを込めた一言だった         


母に抱かれし創造の赤子が目覚めし時より 全ては始まった

そして創造の赤子は今 母の温もりにも似た安らぎの中で眠りへと沈む

そう やがて訪れる新たなる創造の時を迎えんがために…

大陸暦 569年 “創造星神”セヴィリオス=ウェード臨終
シリア=テルティースセヴィリオスの子供を身ごもる
943年 シリア=テルティース臨終 同時にその子供“無限界”となり
西大陸の次元を独立存在させる
944年 “無限界”『無限回廊』を構築“虚現王” との戦いに備える
無限界と虚現王大陸暦255年以後の歴史
を創造同時にミラン=セルの同年以後の歴
史の介入を阻止同人物両星神の名において
真の臨終の年に得る死のみを許可する
無限界と虚現王の双星神“星神戦”へと突入
幾歳月 無限界と虚現王 両神王の相打ちにより
“すべて”が終わる…


Legend  Of  West Destric

No.Third;『 World Creation By New Warriors』
〜 Never Ending



それは親なき孤独の星神   最後に瞳に写りしもの
それは愛君(まなびと)の頬笑み…




WARECORD OF BEING MAIGODDEN SHLIA
WITH HALF BAD GANGS

GRAND FINALE







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