第十四楽章『 神の心 人の心  』

朝もやにけむる大地へと まぶしい陽光を投げかける木漏れ日の中を
若葉の清烈な香りを運ぶ微風が流れていく
周囲の木々達のそよぐ葉音は
小川のせせらぎの様にも聞こえ なかなかに寝覚めの耳には心地よい
特殊な結界が張られているとはいえ この森もごくふつうの森の光景となんら変わるところはない
目が痛いぐらい青々としげる森の木々 その清涼としたさわやかな葉の匂い時折聞こえて来る小鳥達のさえずりに
風に擦れ合う葉と葉のささやき その森浴の感覚は人の心をなごませ
そして 清らかに澄んだ氣持ちへと誘ってくれる
そんな 大自然に囲まれた中に その館は建てられていた
質素な造りながらも手入れのよく行き届いた館だ
レミアは館の裏口の扉を開け 手に桶を持って外へと出てきた
纏っている簡素な外套の袖は肘までまくり上げ それが落ちてこないようバンドで止められている
腰まで届く長い金髪も やはり邪魔にならないよう後ろでポニーテールをつくっている
レミアは桶を抱えたまま その足を館の横手にある井戸へと向ける
今日一日分の水を台所の水瓶にためておくためで これが彼女の朝一番の仕事である
何度か井戸と水瓶とを往復するのだが ここ数日はその回数もいつも よりは少なくてすんでいる
「今日あたりは バルカッゼルさん達は帰っていらっしゃるかしら」
歩きながらレミアは一人呟く  数日前から館の主であるバルカッゼルは留守にしていた
館には時々 何人か泊まりに来る者達がいたが 今は一人もいない
したがって この館に残っているのはレミア一人だった
食事の為の水は自分の分以外必要ないので 水はもっぱら掃除の為である
まだ 陽も昇り始めたばかりで 空氣はひんやりとしていた
低血圧ぎみな彼女にとって肌に感じるその冷たさは
覚めきっていない頭をすっきりとさせてくれなかなかに氣持ちがよかった
井戸までやってくるとレミアは蓋を取り外しかかっている釣瓶を中へ下ろす
釣瓶が水に使った音と 手にした縄のたるみを確認してから 今度は縄を引き上げる
下ろすときとは違い 重たい 手ごたえがレミアの腕にかかってくる
「よいしょっ…」
格式のある良家で育ち 魔法師としての修練を積んで成長してきた彼女には
こういった家事とは殆ど縁のなかったこともあり 最初のころはかなり戸惑いと苦労をしたものだった
しかし 時と経験を経るにつれ 洗濯や掃除の手順もだんだんと覚え
なんとか力仕事もこなせるようになり
特に 炊事に関してはバルカッゼルやそのお弟子さん達には かなりの好評を得るまでの腕になっている
ザアァァ
汲み上げた釣瓶から持ってきた桶へと水をそそぎ込む 桶の半分ぐらいが水で満たされた
「ふうっ…」
息をつくと 再び釣瓶を井戸の中へ下ろして水を汲み上げた
二度目で桶は一杯になり それを両手で下げるとレミアは台所へと向かう
一歩歩くごとに桶の中の水が揺れ しっかりと力を込めて持っていないと桶にふりまわされそうになる
運ぶだけでも 彼女には結構な力仕事なのである
「はやく水を汲み終えて お掃除をしないと…あうっ!!」
突如 襲った激しい頭痛にレミアの手の力が緩む
バシャアア!!
手から桶が抜け落ち 中の水が地面へとこぼれた
桶はころこと転がり流れ出た 水はあっという間に染み込んでいく
「痛い…頭が…熱い…」
うめきながら頭を押さえ レミアは力なくその場に膝をついた
頭が割れるように痛い そして熱かった
まるで意識が溶かされるような激痛
麻痺をし始めたのか 頭が呆然となってくる
糸が切れた様に 四肢に身体中に力が入らなかった
次第に自分の感覚が失われていくことだけが不思議と
失われていく意識にもかかわらず はっきりと認識できた
今まで これに似た感じを経験したことは何度かあった
しかし ここまで激しいのは初めてのことだった
視界がぼやけ始め 目の前が白く見えなくなっていく
自我が閉ざされる という感覚とは違う
自我が失われていく という感覚とも違う
言うならば 自我が変わっていく 感覚に
レミアは 自我と違う それでいて 自我よりももっと根元的な 何かの存在を直接受け始めていた
同時に その意識は光濁としたモノの中に捕らえられ始めていた
私が 私が薄れていく…!!
「私は…レミア…ラス…ティー…ニ…」
視点の合わない虚ろな眼差しを大地に落し ほとんど動かなくなった
唇がそう言葉を紡ぎ出したのを最後に レミア=ラスティーニの意識はこの世界から完全に消え失せた
“私はレミア=ラスティーニ
…いえ違う
…私は…レミアではない
…ならば私は誰?
…私はいったい何者…”

『貴方は私』

“誰?”

『貴方ですよ 今 深き心の眠りより覚める時が来たのです』

“私?…ならば教えてください 私は何者?”
『思いだしてください 貴方自身を
そして 真の私を 
私は そして 貴方はリーゲン…』

“リーゲン…リーゲン…!!”
『“そう 私達はリーゲン…”』
瞬間 すべての記憶が弾け飛び すべての記憶が蘇った      

「そうですか いよいよ眠りより覚める時が来ましたか」
膝を立てゆっくりと立ち上がり 白魚の様なその指を後ろに回すと
髪を縛った飾り布を解く
輝きを宿した金髪が放たれ 滝のように波うち流れた
「そして あまり時は残されていないようですね…」
いつもの穏やかな表情とは裏腹に
天を見上げるその瞳は今までになく険しかった



風が優しく少女の頬を撫でる 寂しげなその姿をいたわるように
風の乙女達が次々と少女にささやきかける 再びその笑顔を取り戻してくれるように
しかし すでに少女の心は死んでいるのに等しかった
あの時 “彼”の“鳳”の死と共に
「…シリア またここに来ていたの」
後ろからかけられた静かな声に しかし シリアは振り返らなかった
その視線の先には一つの墓標と並ぶように突き立てられた
刃渡り三米近い神秘にして 異形の剣があった
それはかつて“彼”が携えていた剣 
今となっては“抜け殻”しかない剣
それでもシリアは 見つめていられずにはいられなかった
無言のまま立ち尽くしているシリアの横へとやってきたのはドレイラだった
ドレイラはシリアと並ぶように立つと墓標の前で屈み込み 携えてきた花束をそっと置いた
「“我が敬愛する父へ”ですか…立派な父親だったようですね リスティは」
懐かしさを込めた口調で呟くと それ以上何も言わずに いつものように墓標へと視線を向けていた
これがもう数週間も続いている 何を尋ねるわけでもなく 何を語るわけでもなく
ドレイラはただ シリアが自分から口を開くのを毎日毎日待っているのだった
今 無理に触れればきっと砕け散ってしまうから
それ程にシリアが傷ついているのは 周りから見ても瞭然だった
「…ここでよかったのかどうかわからない…だけど 私にはあいつが本当に安らげる場所が
どこかなんて知らないから ここしか思い付かなかった…あいつの父親の眠る側しか…」
視線を剣に向けたままシリアが初めてそう呟いた 覇氣のないシリアらしからぬ口調
ガラス細工の様に脆く 今にも壊れてしまいそうな程にはかなげなシリアの姿は
普段のシリアを知るゆえに なおさら痛々しかった
「まだあいつに言いたいことたくさんあったのに 聞きたいこともいっぱいあったのに…も
っともっと一緒にいたかったよ…」
スッ と立ち上がり 今や涙すら枯れてしまったシリアの両肩に 後ろからそっと手を添え
ドレイラはつとめて優しい口調で言った
「話してごらんなさい 私が聞いてあげるから 彼の代わりにはならないけど貴方の氣持ちの整理も必要よ
いつまでもこのままじゃいけないわ 少しでも貴方の氣持ちが晴れるのなら 私はいつまででも聞いてあげる」
「…うん」
シリアは小さくうなづいた


キャロル キャローネ シューメンマッハ  サヴァ
「こんにちわー」
玄関の方から響く聞き覚えのある声を シューメンマッハは明りを押さえた薄暗い自室で耳にした
窓はなく太陽の光はいっさい差し込まない暗黒の空間に 彼の姿を浮かび上がらせる
其の部屋にあるのは 光源は鉛製という珍しい材質の書机 と
その隅に置かれた 青白く冷たい光のみを発す水晶の髑髏のみ
閉ざされた空間には香の香りに混じって 生臭い匂いが漂い
光の届かない闇の奥からは 何かのうごめく音が幾つも聞こえて来る
しばらくして 同じくよく知った別の声が響いた
「貴方 出て頂戴」
声より先にシューメンマッハは読んでいた書物を卓の上に置き
来客を迎えるべく 分厚い鉄 の扉を開き玄関へと足を向けていた
「いらっしゃい サヴァ君」
玄関ではサヴァが待っていた その腕には布にくるまれ抱かれた赤子の姿がある
「マーフィクも 元氣にしていますか?」
「ええ 何かと大変ですけどなんとか 師匠のお子さんの方はどうですか?」
「私の方も元氣ですよ ところで今日は何の用ですか?」
シューメンマッハの問いかけに 多少戸惑いと照れを浮かべサヴァが答える
「その子供のことで またいろいろとキャローネさんに教えて貰おうと思って」
「フフフ…ディアス リアンセリの門の最高術者も 子供のことはまだまだ勉強不足というわけですか」
「そんな鉤呪だってまだまだ勉強不足ですよ もっと努力して力と知識を身につけないと ゲート=オブ=ディアスの復興には手が届きません」
「ああ その話のこともありますから とりあえず部屋へ行きますか」
「それじゃ お邪魔します」
背を向けて歩き出したシューメンマッハについて サヴァも家の中へと足を踏み入れる
「ゲート=オブ=ディアスのことですけど めどはつきましたか?」
「いえ 正直なところいろいろな問題が山積みで全然進まないんです
僕一人だと とても全部はこなしきれなくて」
「人手不足ですか」
話しながら客間として使っている部屋に通じる 両開きの扉に手をかけ ゆっくりと引き開けると
サヴァの方を振り向き 含み笑いを浮かべて言う
「その仕事に興味があるという人が 今 ちょうど来ているのですけどね」
「本当ですか? それならぜひともも こっちからお願いしたいくらいです」
「そう? それはうれしいわ」
その声にサヴァの顔に当惑の色が浮かぶ
い 今の声ってもしかして…
聞き覚えのあるというより 出来れば聞きたくなかった声
ぎこちない動きと自分で知りつつも サヴァはゆっくりと部屋の中に目を向けた
広めの客間には幾つかの調度品が飾られ 中央には深い色をした木製の応接台が据えられている
それを挟んで二対の計四つのソファーがあり その一つにシューメンマッハの妻であるキャローネが座っていた
その向いのソファーには
「おひさしぶりね 坊や」
艶っぽい声にふさわしい容貌の 二十代半ばの女性がサヴァへと笑みを向ける
「どうせなら学院と言わず 新しい国を創りなさいよ 
ウェードの家の遺産は 腐るほどあり余ってるんだから…」

そして シューメンはプーアル茶をすすりながら言葉を続ける
「戦いには間に合わなかったが いい人材が発掘できてな
ナイト兄弟 そして サディ’s…おっと 内緒でしたか
フフ これよりサヴァ君 そして それを紡ぎ継ぐ 
次代の連枝が果ては彼方?そして何処…」


そして テラスから大庭に出るサディ
サディ「No.13 現れなさい!」
すっ とランド=ロー
サディ「それと キャローネ!」
キャローネ「はいはい」
サディ「返事は一回!ったく!誰に似て生意氣なのかしら?」
ランド=ロー「……」
サディ「ランド=ロー これが組織の後継者 私の娘キャローネ」
キャローネ「いくぜ ガキ大将」
ランド=ロー「…よしこい秀才」
と言うとランドローは一礼して指示を待つ
キャローネ「始めまして幻霧が裏会 最高の仕掛師ランド=ロー 
貴方の勤めはたしか母の護衛でしたね
でも フラッシュ=バックの追討という命令は無効となり
もはや現在 母は命を狙われるという意味そのものがなさない」
ランド=ロー「……」
キャローネ「組織の長としてNo.13 貴方の長きに渡る勤めの任を解きます」
ランド=ロー「…」
キャローネ「よって 古の取り決めにて 貴公を労いたく
自由なる報酬の内容をなんとしましょう?」
ランド=ロー「…それは……にて御免!」
というと 煙幕を放出すると
すぅ と姿を隠していく


それは ウエスト の恐怖が一つ
幻霧が暗殺界の最高仕掛師(トップ=エージェント)No.13“沈黙の暗殺者”
幾千の魂を吸った その技は “沈黙”という伝承さえ生み
その 末路は只 沈黙の闇の中に染める

その闇の果てに
未だ “中つ神の者”を追い求めるならば
その闇の向こうに在る 虚ろよりも遥か彼方の
“異星雲”への界門まで
潜る禁を侵すのであろうか?
そして
異界を超えた“中つ神々が主”の組織 「不羊の群(トップ=シークレッツ)」にまで
仕掛けを施すのであろうか?

その 仕掛けの末路は只 沈黙の闇の向こうにある




ミラン 「ねー お嬢さん一緒にお茶しない? 一杯でいいからね? つき合ってよ」

びくうっ!!
ミラン 「(振り向き)うわぁぁ!! 出たな 妖怪変化!!…って あれ なんだ ドレイラか」
ドレイラ 「ミラン シリアったらもう数週間もあのままなのよ 何とか立ち直らせることが出来ないかしら」
ミラン 「あームリムリ それに私としてはそっちの方が嬉しいもん
あ おじょーさん待って!」
ドレイラ 「ミラン 貴方あんなシリアを見てもなんとも思わないの?! 昔 一緒に旅をした仲間でしょう?!」
ミラン 「ボクに そんな義理はないもーん」

ミラン 「とは言ったものの…なーんか 張り合いがないんだよなあ」

ヴェリア マリー(煉獄暗皇として覚醒する前の話)

ヴェリアの前に 無造作に積まれた人形達がある
イリフィトラはこの中のどれかが貴様の姉マウラーヌだと言う
手にとる人形は悲しい表情をして眠るフェレア
フェレアを手にとると 人形達は騒ぎ始める
それは ジャナセリア の妖精の民達
「あんた等の言う通りに 俺達は戦争に刈り出され
結局は俺達の家は海の中かよ アホ くさ」
眠りながらも一筋 涙 を落とすフェレア
ローラの前にも無造作に積まれた人形達がある
イリフィトラはこの中のどれかが貴様の嫁フェレアだと言う
ローラにはこれが悪夢だと着付くが
何氣なく手にとる人形は ローラの手に剣を突き立て
「お前の弱虫には 最後までイヤ氣がさしてくる!!」
と叫ぶマリー そして それでも何も出来ないローラを見ると
悲しみの視線を ふと 下に落とす
「もう一人の誰か…私?…私にある封印を解いて ここは…危険…」
と言いながら マリー の体は砂塵と化し
砂は ローラの手の隙間からこぼれ
イリフィトラの笑い声と供に 何処拭く風にさらわれていく
そして イリフィトラ は フェレアの父 ブレゼネゼラ=レイゼンに変わった
「お前には餓えるまでの勝利への執着が足りない
それで ローラ=ドーロとして 煉獄暗皇を克服できるのか? 
少しは 期待をさせてくれまいか」
レイゼン は 精霊王国の大翁 シーザーに変わった
「お主の力の限りで国を守りきれなんだら もう わしも言わまいて…
それよりも わしはお前さんとフェレア嬢ちゃんが生き伸びてくれた方が嬉しいて」
シーザー は かつての恩師 ゼブラに変わった
「技術的に教えれるものは全て終った
すまねえな 俺は親父シーザーと違って諦めがよすぎてな
だから おさらばさ」
そして ローラ にかかわる すべての者達が一斉に口を開く


『もう お前の無能には 付き合いきれないのだ』

イリフィトラは笑いながら
「どうやら 皆がそう言うなぁ
お前は何を志して
生きているのか?
結局 全てを無駄に終らす
無意味な肉塊じゃないか 

あはは

あはは

あはははは 」

ローラには それが悪夢だと着付いている
しかし イリフィトラ は笑い続け居る
悪夢だとは 氣付いては いる




ウィリアム マック スクリアイラ
剣 と 剣 を交わし
呪 と 呪 を織り込み
牙 と 牙 を鳴らし
肉 と 肉 を会わす
幾縁の噴脈が絡み合う結び目は
末路の断殺魔が獣狼の叫び声
ウイリアムの斧-カルマ-がマックを切り刻み
ウイリアムも

「ぐおっ   !!

お っ




ぁ !!」
と地に己の屍を叩き着け 尽き果てる
虚空のスクリアイラ もはや戦闘不能のふたりを取り込み出現
ウィリアム マックの血斗
そして スクリアイラの強襲の始終を観ても
心あらずのクライスの様も 一睨し
スクリアイラ「すでに石と化しそうか?ククク 俺の天下も近い」
といって悠々と立ち去る


聖天太祖 「数百年ぶりにリーゲン おまえに命ずることがある
中立星神エヴァンスの采配というものを探してくれ
それと その力をもっておまえの力と融合してほしい」
リーゲン 「理由は?」
聖天太祖 「ついにとうとう動きだした 無の神めが」
聖天太祖リーゲンに自分の力をたくす すべての力を
聖天太祖 「おまえのその力 向上心と応用力に
さっき奪っておいた“煉獄暗皇”の力の一部もあたえよう」
リーゲン 「貴方はダミーになるつもりですか」
聖天太祖 「…」
リーゲン 「破魔剣聖とは 人と時代を見つめ 剣を用いて生を諭すもの
聖者となりて 魔人となりて…」
互いに礼をしてフッと消える

クライス ブラファン

クライス は戦い続けることで クライスを為し得る
故に ブラックファングスは憮然となっていた
冥府王の現世においての消滅による 霊魂の活力の減退
それは冥府地獄界にとって 覇権の闘争と脱獄の機会である
冥界での実力者とは 現世での基の力に加え
冥府への来獄後にあって 影響をもつもので
転生を行われない亡者ほど 影響力を帯びる
しかし 千年は留まろう魂よりも
ここ 数百年の亡魂の基力が上回るのが現実であった
冥界においても使役を怠る 妖怪を誅殺する使命を帯びる
殺戮の申し子 地獄断錯師 リフィラム=ウェード
だが 彼の口をなして冥宮内に布告する
「名誉大王が視察にくる 俺はただ 斬り続ける だけだ」

はたして 異形の妖黒豹は ふらり とやってきて告げる
「今は只 脱獄を企てる亡魂どもの攻勢に遭う 地獄第五門への援軍に向かえ」
すると 地獄の鬼族侯爵にして 冥府中将の犀王 ウズ=ダイは時を得たかのように
「てめえら鬼族議会じゃ 事後の覇権を伺って 俺の出軍案を蹴りやがったが
今は殿下の勅命だ ぐずっている と食っちまうぞ!」
すると 冥宮内は蜘蛛の子を散らしたように鬼影は消えていった
異形の妖黒豹「ウズ=ダイ」
ウズ=ダイ「はっ!」
異形の妖黒豹「貴様が以後 地獄を仕切れ」
ウズ=ダイ「はっ?は!」
そして 異形の暗妖狐は ゆらり と宮内を後にした



「で 外にある金貨の山が 俺への退職金とでも言いたいのか?
おっさん自身は ルバラドの精霊殿で瞑想かよ?
アホの様に眠っててクイーンを見つける氣なら とっくに見つかっているだろう
だいたい 今まで戦好きのおっさんがわざわざ兵を率いて戦いを仕掛けるのは
戦場でじっくり自分と張り合う猛者の発見の為だっただんろ   
今は将たる事も捨てたってことは 戦い そして 自分 も捨てたってことかよ」

ラカンは表情 ひとつ変えない
「ふん!じゃあ 最後に言わせてもらうが
今度の敗北程度で ヘコムのはおかしいぜ
おっさんは偉そうな割には聖天太祖ナゴスギール
精霊王レイゼン
狂公子エルメネイラ
ローラ=ドーロ
フォーゲルド
ソルセート
エイク
ロレドールス
セルシオ
ルキフェルス
スキュラ 
そして
ラバストーン
リアンフルと見事に敗北の歴史だ
挙句に己の女も リアンフルに質入れ…
あれは おっさん自身の 彼女への憂いの思いとの
別れだったのかも知らねえけどな
そうやって性懲りもなく這い上がってきたの
が おっさんだろ
今まで汚名の上に生きて
シリアが加わった所で 今さら恥じもないぜ…
言いたい事は もう終わりだ じゃあな」
ラカンは表情ひとつ変えない 
ブラファンは去り際に
「おっさんのガキの魂が
こんなこと言ってたぜ
生まれ出づる 時の迷い子
その道しるべを手に探り
眼には映らぬが
血は故あって
鋼の匂いに惹かれ
定刻(さだめ)の律を嗅ぎ分かつ
“煌”に“爛”なる私生児あるもの
“帝”がはかりごと
“煌”が忠臣“狄”と “爛”に
いつわりの絆あたえんもの
時代は
二者の剣を交錯させ
“爛”の流血は 闘嵬(クライス) と 
混沌(ケイオス)の共鳴を促し
それは 親子の絆を呼び覚ますが
その再会こそ
別離の瞬間と
ただ 笑い悟るもの

この上は
父の志の是非を案ずるも
かく己の魂は
既に安らぎ
次代への眠りにて
ただ待つ候 」



ブラファン「剣の公子は 退きも出来ぬ実力の違いにも黙し 
只 切り砕けた純一なる戦鬼として賛えよう
そして“煌”はいかなる最終章−ラスト=シーン−を奏でるか
願わくは一葉の戦士に還り かく熱を帯び蘇らんことを」
と ブラファンは その在る意味も霞始めた天空を一瞥し 自らも旅立った



ナゴスギール 煉獄暗皇 セイバー ランド=ロー
X次元の獄に幽閉されている“煉獄暗皇”ローラ=ドーロ
声 「やみおー やみおー やみおー…」
ローラ 「だれだー だれだ だれだー…」
声 「そっちかー そっちかー そっちかー…」
ローラ 「ここだー」
鋼の糸がたらされる 声 「ダメーシがくるけど それを握れ」
ローラ 「(掴むと手が切れる)…なんだ これは!」
声 「…と 俺の力では引き上げられない」
声U 「俺の力か?」
ぐーんと引き上げられる  X次元からやっと言葉に表せるような次元になって
それがだんだん 桁が一つずつ一つずつ狭まっていって
やっと元の三次元へと戻る
ローラ 「ここは どこ?」
装束の男 「…」
セイバー 「わかった 通訳をしよう」
装束の男 「…」
セイバー 「おまえを助けたのは」
装束の男 「…」
セイバー 「雇われたから 助けたのだ」
ローラ 「誰に?」
装束の男 「…」
セイバー 「依頼主の名をあかすことはできない」
装束の男 「…」
セイバー 「わかったな」
ローラ 「で ここはどこだ?」
装束の男 「…」
セイバー 「セイバーと言われる お家だ…話になってないぞ!!」
装束の男 「…」
セイバー 「貴様の通訳力が悪い…うるせえ!!」
ローラ ガチャと扉を開ける
そこは とても くらーいトコ
一人屈強な男がいる
男 「ひーさーしーぶーりー…」
バタン
ローラ 「(頬をひきつらせ)…」
ドアがボーンと壊れる
男が指先をチョイチョイと曲げる
ローラ強烈な力に引き寄せられる
男 「まぁ 座れよな このタコ助が…」
男 「あいかわらず低い腰じゃのう“煉獄暗皇”…」
セイバー 「この人だけには 言葉を選んだほうがいいっすよ」
男 「俺がおまえの命 買ってやったんだこん畜生…」
ローラ 「で 何がいいたいんですか 聖天太祖ナゴスギールさん」
ナゴスギール 「俺の用件か このおたんこなす」
ナゴスギール 「おまえを生かしたのは 兄貴がよぉ」
ローラ 「兄貴? ああ アホか」
ナゴスギール 「そうだアホだ まあ手を貸せ」
ローラ 「で 手を貸すってどのように?」
ナゴスギール 「俺の暗の力 おまえの光の力を貸すってことだ」
ローラ 「だから どのように」
ナゴスギール 「簡単だ 一時期 身体を入れ換えてくれ」
ローラ 「は?」
ナゴスギール 「疑問はないだろうな 俺は命令してるんだ
助力を仰いでいるわけではない」
聖天太祖 「交換性自由来来(チェンジング=コウ=ウルゴトル)!」
煉獄暗皇 「交換性自由来来(チェンジング=コウ=ウルゴトル)!」
煉獄暗皇 「で 貸したのはいいが」
聖天太祖 「まずそこに座れ 心を一つにしなきゃ出来ねぇんだ この志念は」
召喚志念
やせ細った青年 「おひさしぶりです」
聖天太祖 「元に戻ろう 『チェンジング=コウ=ウルゴトル』」
煉獄暗皇 「じゃ元の現世へ戻ろう」
聖天太祖 「シッシッ!! いいよ いらんいらん おまえ」

エイク サーバス ミーリア ヌーヴォ セイバー

半ば崩れ落ちた天井
倒壊した壁面
何かを具象化していたはずの 天窓代わりのステンドグラス
今や砕け何を表現していたものかはもはやさだかではない
そこは暗い空間だった
失った天井から太陽の光が差し込み 完全なる暗夜の世界というではないが が 空氣は重く沈んでいる
打ち捨てられた建造物がもつ さびれた感じ ひとけの途絶えた後に ぽっかりと残る奇妙な存在の欠如感
太古に打ち捨てられた 過去の人々の生活感 
さまざまな思い 輝くばかりの命の息吹 あふれんばかりの魂の波動を失ったこの空間は 悠久と同時に 虚無感を宿す
永遠を手に入れると言うことは 同時にすべてを失うことなのかもしれない
すべてを失うからこそ永遠が手にはいるのではないか 
この場を訪れた者はすべからく そんな感慨を心に宿すのではないかと思われる程
その空間は安定していた
言い替えれば死んでいた
もはや すべての人に見捨てられ 時にさえも背を向けられ
やがて知らずのうちに消えゆく運命にある建物
その空間に訪れる者は すでに途絶えたはずだった
少なくとも 数百年 数千年 否 数千万年の歳月の経過すら漂わせる
その聖堂であったらしい間に 生の息吹は存在していなかった
いや 存在していなかった今 その間には異なる存在があった
歳月の洗礼を受けていないものがあった
しかし それは訪れた者に違和感を与えるものでは決してなかった
なぜなら そのものにも悠久は宿っていたから
力強い命の輝きを失った 氣高い魂の輝きを失った死の国の住人
聖堂の奥太陽の光を反射し 七色の光を弾く水晶のごとき氷の棺の中に
その女性は眠っていた
優しい笑みを浮かべていたであろうその面立ちは 今や人形のごとく感情を失い
心安らぐ言葉を語ったであろうその唇は 今や紅の色を失っている
永遠とはかくも生氣を奪うものであろうか
永遠とはかくも輝きを犠牲にするものであろうか
ならば なんと酷いものか
この棺の中の女性は永遠の中に宿っている 死という魂の安寧に 氷の棺という肉体の縛鎖を受け
しかし それを施した者は必ずしもそれを望んではいなかった
静寂を破り足音が響くこの空間においてもの悲しくはかなげに
それでいて静寂をかき乱す音 それは足音の主の心そのものだった
聖堂へと通じる通路から一人の若者が姿を現した
その瞬間 すべての物質は輝きを失った
建物も 氷の棺も 死の床にはべる女性も 静寂の空間
もそして『時』さえ
その髪      それは月光を紡いだ絹の糸のごとく
その瞳      深き水の乙女を結晶化した宝玉の様
その唇      薄紅の香りを宿した狂おしい色香が
その姿      神々すらその魂を魅惑する

若者はあまりに美しすぎた
若者の放つ波動は間違いなく人間のものであった
しかし その美しさはこの場のすべてを凌駕していた
いや その若者の存在に周囲のあらゆるものは 例外なく色あせ輝きを失うであろうたとえ
星神でさえ その美しさには心引かれる程に
しかし 本人が望む望まざるにかかわらず その姿雰囲氣ゆえ
若者はいつも 羨望 妬み 欲望 の対象としてさらされてきた
若者にとっては自らの美しさは 呪われた存在以外のなにものでもなかったのである
若者の名前はエイク=シルヴェードと言う
そして 氷の棺の中で死の眠りについているのは若者の妻であった
「…やはり諦めなればいけないのか 君を蘇らせるためにあらゆる方法を求め
暗にすら魂を売り渡したというのに 最後の頼みだった冥府王も輝神に消滅させられてしまった」
棺の前に立つとエイクは すでにその言葉を聞くこともない自分の妻へとそれでも語りかる様に呟く
すべては自分の力不足ゆえだった 妻を救えなかった事も そして蘇らせる事が出来なかったことも
そして 妻の死でさえ彼女の死を知った時 エイクはすぐに蘇生の黒魔法を施してもらった
しかし 彼女は蘇らなかった
それでもエイクは大陸を巡り 幾人もの術者を頼って その蘇生の力を借りた
しかし その誰もが彼女の命の灯火を再び燃え上がらせることは出来なかった
死してから時が経ち過ぎたため 魂と肉体のつながりが薄れすぎたからではなかった
理由はまったく解らなかった それでも エイクはあらゆる手段を試みた
そして この世界に降臨した冥界の王マスター=サモンイントとさえ契約を結んだ
その力で妻を蘇らせてくれる代償として
自分の今の主たる“魔皇の剣”ラカンヴァネラ=クライスの軍門へと下ること
数百年の沈黙を破り この大陸に再び蘇った魔王の暗黒勢力 降魔神軍にその力を貸すという条件で
しかし数カ月前 冥府の王は光と暗の勢力の激突の際
輝神の絶対的なまでの力により 消しさられてしまったのだった
もはやエイクにとって すべての希望は断たれたに等しかった
「…フフフ 情けないよな いや自業自得か
君の愛情は俺やフリスレンにわけ隔てなく注がれていたのに
俺は君しか見ていなかったものな」
両手を差し伸ばすと静かに氷の棺へと触れる
鏡の様なその表面に映った自らの顔を見 エイクはふと自嘲の笑みを浮かべた
「あいつは…フリスレンは俺に似すぎていた
息子だというのに いや 息子だからか
あいつの姿形はまるで自分を見ているようだった
だから俺はあいつに親としての愛情を注げなかった
自分が嫌だった俺には」
淡々としたその口調には懐かしみというよりは 後悔の響きがあった
「そう言えばあいつは君にはよくなついていたが 俺の事はひどく嫌ってたな
うじうじした性格 悲観的な態度が情けねぇって必要以上につっかかってきた
まったく 今思えばあいつの言うとおりだった…」
「クククク…」
突如 別の男の声がエイクの耳に聞こえた
「過去にすがりついたまま 未だに現実を見ようとしないとはな」
エイクの表情が驚愕に歪んだ 男の科白にではなかった
目の前で氷の棺に無数の亀裂が走ったかと思うと
それはガラスの様に弾け飛んだのだった
大きく見開かれたその瞳が 氷の破片の中に閉じ込められたまま
無惨に砕け散った彼女の身体を無情にも映していた
「そんな…」
呆然と立ちすくむエイクの背に 更に男の冷たい声が突き立てられる
「アホンダウラ降魔神軍 氷喚師エイク=シルヴェード…大人しかった飼犬が少しはスレたと思っていたが」
その言葉にエイクは弾かれた様に後ろを振り返った
氣配は 自分が入って来た通路の奥から感じられた
いや もはや氣配と言うより研ぎ澄まされた冷刃のような殺氣の塊だった
「誰だ…」
初めての感じがしない 以前 似たような氣配をどこかで感じたことのある氣がする
通路の向こう暗から湧き出す様に そいつは現れた
闇そのものとも思える黒髪に黒い瞳
その顔は刃を含んだ声を容易に想像させる冷徹さを浮かべている
「イリフィトラ神帝軍 ゾレ=ヌーベル 貴様の命を刈りにきた」
不氣味な笑みを浮かべる男の その顔にエイクは見覚えがなかった
「イリフィトラ…? 聞き覚えのない神の名だが…」

「偉大なる帝だよ 魔王や絶対神なんかよりも遥かにな
この俺が初めて自分が仕えるに値する存在に触れた
それが イリフィトラ さ
圧倒的な力を持ち 真にすべてからの解放をこの世界にもたらしてくれる
たかが カリスマで表面上の国の平和を取り繕っていた女王や
すまし顔の 事なかれ将軍とは違ってな」
「…どうやら 知っているのは俺の事だけじゃないようだな いったい何者だ…」
「氣づかないなら 知らずともよい…」
男はどこからか小さなアクセサリーの様なものを取り出した
鈍い光を放つその鋼の細工が 普通の物などでないことは
放たれている雰囲氣から容易に伺える
それは柄の長い鎌の形をしていた
「そっ…」
それを見た瞬間 ゾクッ とした寒氣がエイクの背を走り抜けた
「お前…まさか…」
「ご明察」
男が右腕を振るった次の瞬間
その手には一本の片刃の鎌が握られていた
「馬鹿な…あの爆発を生き延びていたとは…」
呟くエイクの額に冷や汗が浮かぶ
いや 額だけでなく全身がそうだった
男の正体がわかった瞬間 その男の正体を知るがゆえだった
エイクのその様を感じ取ったのか 男は冷笑と共に言い放った
「どうした おびえているのか? そうだよな 俺とおまえでは力の差は歴然としている
戦えば結果は見えているものな」
「…今更 俺の命をとってどうする まだあの戦争を引きずっているのか
もう国は消滅したというのに」
表情を変えずにエイクが問う
「違うな おまえだけじゃない ドレイラ も サーバス も ブラックファングス も
ローラ=ドーロ も ラカンヴァネラも生き残っている
ジャナセリアに関わったヤツ等は皆殺しだ」
「何?」
「言ったろう 俺はイリフィトラ神帝軍のヌーヴォなんだよ 残りもすぐに送ってやる…」
男が鎌をゆっくりと構えた その刃は男の瞳と同様死を感じさせる 冷たい輝きを宿していた
「まず 貴様から死ね」
男の実力を知るが故 エイクにはその言葉はまるで死の宣告のように響いて聞こえた

セイバー登場 
エイク
サーバス(両者のシリアスで悲劇な部分のみ)のヴィジョンをかいまみる
それらを見比べわななきながら
セイバー「俺の…体がアル…心がイル…ヨワサ…ヤダ…ゲ=ン=カ=イ…お前らを見てい
ると…
吐_
き_
氣_
が_
し_
て_
く_
ら_
ぁ_
!_
!_」
セイバー エイク サーバスをその口で“喰んでいく”
おそらく サーバスにとっては地獄が現実にきた恐怖があるだろう
しかし エイクにとっては現実という地獄から開放された快楽があるのかも知れない…

リーゲン登場
リーゲンの力 それは 聖天太祖 光武王 煉獄暗皇 そしてエントラヴァンスによる“癒し”の力
狂える セヴィリオスの腐食した魂でさえ 蘇生していく
ヌーヴォーには 兄レイゼンに見える
ヌーヴォー切りかかるが 一切の傷なし
ヌーヴォーの心臓を一付き
リーゲン「兄は“他”の為に 弟は“我”の為に剣を抜く刻−さだめ−か…」
リーゲン「魅了と知恵の“美珠” 機敏と生命力の“彦神” 力と精神 “狂天使”
時代は 数々の(天使=駄作)を創造して 貴方にたどり着いたのです
せめて 貴方くらいは稟とした生き方を見せてくださいな…」
セイバー「無理だ 俺達を作った“モノタチ”そのもの精神−こころ−が未熟なんだからよ…」
と いいつつ己の腕を−剣化−させる
セイバー「まぁ そうだからこそ…あいつに…そして“貴方”を侵せる “祈り−こころ”が出来ちまったんだけどな」
リーゲン「私か貴方 どちらかのつもりだったのですが…いいでしょう
出来るものなら私を見事 貴方の糧にしてみて下さい」
セイバー そして 真名 聖魔輝神 試作型擬生人(デミダウラ=イ=マケイシュリム)による
征負界十一門が解き放つ 異界さえも越跨し
その界をも糧蝕する 阿鼻無間の吸体念動 渇生補抗還衝(アヴィナローテ=ユニバース)を
処界(ディスト)の守星神が一柱 公武星神リーゲンに発動

時は神々の時代に飛び
アホンダウラ スクリアイラ戦の際
両者に十一門の影響が−ここに−及ぶ
スクリアイラは直撃をくらい
虚天闘王(アスマラシエル)として強制転生させられる
同時にアホンダウラの心臓を居抜き
自らの母を女として得る為に
父親に対し“闘争心”が芽生える
そしてその“闘争心=略奪愛”が娘ゲルサンドラに遺伝する

リーゲン 臨終

この大陸とは階層の異なる“閉じた”位界
創造された時より主の結界によって隔絶された聖域
そこに一人の男がいた
とてつもなく広い地の
只一つの墓標の上に男は座っていた
ここに時間という概念は存在してはいない
永遠にして刹那の刻みを
男は墓標の上で過ごした
男は待っているのだった
そして それは訪れた
男の眼前にはもう一人の男が存在していた
「久しぶりだな…我が息子よ」
“極無”を纏った男が言った
「必ず来ると思っていた」
墓標に座った“極天”がゆっくりと腰をあげた
「父神よ 一つ言いたいことがある」
「ほう奇遇だな 我もそうだ」
二柱は同時に力を放った


『テメエは氣にくわねえ』


“極無”は“虚祖”を具現させ“極天”は“聖天”と化した
幾度かの衝突にも二つの均衡は保たれたままであった
遥か先の刹那“聖天”の背後から
別の“極無”が現れた
“虚祖”との戦いに全存在をかけて挑んでいた“極天”を突如
“虚天”が覆い尽くした
均衡は崩れた
“極天”は“虚天”に食われた
「昔からテメエは そんなヤツだったな」
“極天”が消滅する間際 そんな力が弾けて散った
「“光”消えて“無”生じる」
“虚天”が震えた
「これで終わった さあ いよいよ最後の仕上げに移ろうか」

“虚祖”が震えた
「それと“虚天”よ 今までご苦労
だが もう用事は済んだ」



『だカら消エな』



それが 虚なる天が王の効いた最後の言葉であった




>>次が章ゑ




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