間奏「暗黯剣師 ハイネスト」の章

刻録レコードを十年程 巻き戻し)

英雄とならん流浪の戦士達には
西の大陸六戦士を問うのは野暮でしょう
革命王リーゲン候
永遠の金剛戦士 リューク
流浪の剣師 ハイネスト
仮面の法王 ブレイハルト
そして詩さえ無き謎の戦士 二人
この英傑達には 多種多様の詩がある
今宵 私が奏でるは 暗黯剣師 倒魔の章
酒のつまみに では 御静聴……

「ドォーグレェッグゥゥー!!」
ここは世を轟かせる魔王の居城ナムクサンダラ その城主たる魔王パピシャスと呼ばれし男は
魔王国宰相ドーグレッグの読み上げた 戦況報告に怒りを投げかけた
だが この国の数少なき才賢派は 敢えて無視ながら言葉を奉じ続ける

ドーグレッグ「陛下 私に怒鳴りかけても 仕方がありません」
「わかっておる!!くそー あの忌々しい男」
とパピシャスが言葉をこぼすと ドーグレッグは無表情に しかし手早くあの男 に関する書類を手に『古式転移』して読み上げる

ドーグレッグ「ハイネスト=マクベリー現在二十二歳 暗黒神ジョルグ=ルドラィア崇拝の小国 琥珀月皇国の農家に五男として誕生 十六の折自分の父を首魁とする農民一揆に参加し 始めて倒した相手の剣を取りて戦士ウォーリア として覚醒する 
一揆自体は失敗に終わるも 捕まったハイネストは 皇国貴族の一人に腕を見込まれ 一族皆殺しの罪を不問にされる 
そして恩人であるこの貴族にある程度の剣の型を教わり 三年の剣闘士生活を贈る後その貴族の養子となり マクベリーの姓を貰う
 そして数々の武勇をあげ 隣国である騎神ギールファクト崇拝のイルハイム公国(ブレイハルト妃殿下の先家にあたる)が軍勢 規模にして琥珀月皇国の数倍を誇る大国の討伐遊撃隊長に抜擢 
そして カイン峠の奇跡と呼ばれる戦にて皇国を勝利に導き この軍功にて第二皇国軍団将に命じられ 現在 我ら降魔神軍相手に獅子奮迅の活躍を……」

パピシャス「もういい 長すぎて頭が痛くなってきた・・・」
ドーグレッグ「まさに 必剋将軍という名は彼に与えるべきですな」
パピシャスの顔に少し嫉妬の陰が見えたのを ドーグレッグは読みとることができた
パピシャス「レッグ その将軍様が我らの敵なんだぞ こんな B級の国落とすのに 何日かかってんだよー」
ドーグレッグ(今回は貴方が C調 コミック=バージョン だからです)
作者の意図まで読み取れる策士ドーグレッグは心に思うが しまった!と 後悔の念が脳裏に走る
陛下は任意に心が読める方 ドーグレッグは下目使いに 玉座にふん反り返っている王者を見る
助かった

パピシャス「んー 我輩の軍にも 真面目な奴っぁいらんと思ったが やっぱ そんな強靭な獅子が 一人くらいはおってもいいかな……のう ドォグレッグゥー!?」
謀略軍師ドーグレッグはこの放埓な男に どういう対処をしていいかは熟知していた
ドーグレッグ「陛下の諸行は常に正しき邪道 御心のままに」
「おだてるな バカヤロー!」
と言いつつ パピシャスは嬉しそうな顔をしていた
ドーグレッグは安心していた この 科曰 セリフ の出た日の陛下ほど頼もしいことはない 何やら吉兆が起こりそうだ
パピシャス「C調にはC調の戦い方を見せてやろうではないか なあ レッグ!?」
と 暗黒魔道の権化 が笑えば ドーグレッグは ただ 頭を垂れるしかなかった

ここは先勝の際に首都を移転したため 暗黒神ジョルグ=ルドラィアを信仰する琥珀月皇国の城下町となった 元イルハイム公国の首都 ウル=イルハイム では 先ほどの戦の先勝会を 町挙げての祝いを行っている

西の大陸の傾向として欲望の化神ジョルグ すなわち 悪とはあまり定義づけられてはいない
たしかに 普通の国とはいかないが どこぞやの暴君が治める国に比べては 幸せな国と言えるだろうだが

ここの先住人のギールファクト信仰 イルハイム国民にとっては ブレイハルト法王の革命までの二十年間 隷民生活が始まり 十二年後 伝説の爆弾娘スザンナが誕生する迄の労苦を架せられることとなる


街の改装もととわない酒場「聖なる回廊亭」には 荒暮れ男達がタダ酒を強奪 いや 先勝品の分配を手にし
同胞達と肩を組ながら 己の戦場での武勲(たいていはホラ話であるが)を泥酔しながら語り合い 
すっかりできあがってきた頃 今まで貴族の賞賛の嵐にあって やっと解放された重苦しい勲章を張り付けた 黒い鎧を貫いた男が入ってきた

傭兵「おっと 我らの大将軍様が 閲兵しにきやすったぜ」
背に大剣を提げた 手練の傭兵が冷やかす
ハイネスト「おいおい 止めな 俺はお堅いことは 一個小隊を潰すことより苦手なんだ」
酒場中に歓声が起こる

ハイネストは どちらかというと貴族に囲まれた宮廷よりも 氣が知れた兵隊たちと安酒を酌み交わしながら
くだらない話をするほうが好きだし 何よりも 症にあっている

まあ たまには美しき姫君を横に高級な葡萄酒で乾杯というのも一興かもしれないが
と 一人のゴツイ巨漢男の声で 現実に戻される

「ハイネスト あんたの戦ぶりを カウンターに座っているあの若い兄やんが詩に したいんだってよ」
ハイネストはカウンターに座って 顔立ちのいい詩人に話しかける
「俺の詩を作ってくれるのかい?照れくさいが作るなら 格好いいのにしてくれよ」
詩人は貴方の奢ってくれる酒次第で 出来が違いますよと反論された

店の酒を良き友達とすべて飲み潰した頃 ボトルを抱え鼾を掻く荒暮れ達を跨ぎ あるいは踏みつけつつ 外に出る
空はすでに日が差し掛かっていたが 空から一羽の大鷲が城に向かって飛んでゆく ハイネストは半分 苦笑いしながら
「やれやれ 敵さんは早くも店開きかい」
と ハイネストは 愛用の長剣に向かって独り言をいう
「はは それはお互い様だろ」
そして ビクトラウト城に向かうため迎えにきた 部下の馬を一つ拝借し駆った

ここは ビクトラウト城謁見兼会議の間
広間中央に赤の絨毯が敷かれ 正面に玉座までに居並ぶ頑丈そうな 長槍斧 ハルバード を右手に持った騎士達が並んでいる

玉座に座る 歳六十三になる皇帝ギルファー\世は 花火の打ち上げ召集により集められた大将軍ハイネスト以下 二十六人の将軍達に号令をかけた後 琥珀月の語り草となった ハイネスト四秒スピーチが続いて行われる

ハイネスト「一つ 各員が其々の任務を 着実に遂行する事のみが 勝利を弾き出してくれる方法である 以上だ」
ハイネストは面倒くさい御託が心底嫌いな男 一番言いたい事を簡潔にいってもらったほうが
兵士達の頭に入るものである との持論の彼らしく 素早く壇上を降りた

長い城の回廊を抜け 軍御用達の上官用の戦馬収容室に 多数の上官達が意氣揚々と駆け込んでくる
すでに用意の整っているハイネストが 愛馬の手綱を取り収容門を出ようとしているとき
十六歳と云う年の割りには 騎士官訓練校を首席 及び 跳級で卒業 先日の首都占戦でも各段の勲功を挙げ
この度千騎隊長という位についた 若き青年将校がハイネストに声をかけてきた

将校「将軍 つかぬ事を伺いますが どうしたら そこまで剣の技を鍛えられるのですか」
それは 我が上官であり 自分を高く評価し 抜擢くれた必剋将軍その人 しかし 返ってきたのは 冷たい罵倒であった
ハイネスト「千騎長 号令を出された時から すでに戦いは始まっている 私語を慎め……」
若き将校は 常日頃の気さくさは何処へやら 戦場でしか見られないはずの 彼の殺氣を感じ取った
将校「す すみません将軍」
ハイネストはハッとした 心に乱れありては 本領発揮できぬもの
ハイネストは 急ぎ収容門に向かう千騎長を止める
千騎長「リチャード=ワイスマン卿  今すぐ貴殿を第一中隊隊長の地位を剥奪する」
千騎長の表情は けして変わらなかった
ハイネストは心の奥底で思った なんと冷やかな眼をしている
この表情なら戦場にで  横に置いても差し支えはないと
将校「意義はありません」
ハイネスト「代りに 第一遊撃隊に配属する」
将校「え!?というと」
ハイネスト「俺は口では語らない だから その瞳でみて学びとるんだな」
将校「は……はい!」
ハイネスト「だが見とれすぎて いつのまにか 胴体が離れていたってことにはなるなよ」
とハイネストは 赤面している千騎長に
みろ 遅れをとった と 愚痴をこぼしながら収容門に向かった

戦場はまさに地獄絵図だった
地に伏すのは数え切れないほどの屍 その屍を乗り越えさらに戦う兵と妖怪
既にこの地に理性などなかった ただ あるのはお互いを戦いに駆り立てる狂氣と血のみ
戦場には怒声と血の臭いだけが生々しく漂い ハイネストは馬足を緩めると 戦況に目を凝らした

「不味いですね どうやら 我々が劣勢のようです」
ハイネストの側に馬を寄せたリチャードがわずかに顔を顰めながら呟いたが ハイネストは暫くの間 ただ じっと眼前を見据えているだけだった
リチャードはそんな将軍の様子を 疑問に思わざるをえなかった
明らかに我が軍が押されているというのに 将軍は動こうとしない
我ら遊撃隊の役目は敵兵の動きを撹乱し 優位に運ぶこと足るに 何故 動かれないのだ
ハイネスト「リチャード 遊撃隊の役割を知っているか?」
突然かけられたハイネストの言葉に リチャードは 一瞬戸惑ったが 次の瞬間にはひきしまった表情で言葉を返す
リチャード「勿論です 我々の役目は単独行動によって 敵の目を拡散させ戦況を優位に導くことです」
ハイネスト「その通りだ だからこそ よく現状を把握せねばならん むやみに突撃することが 我らの使命ではない 遊撃隊というものは 戦場に於いて一番 冷静でなければならぬのだ」
この時リチャード以下遊撃隊の面々は改めて 自らの将軍の偉大さを感じとった 
この人はまさに 前線を駆る勇将にして 軍師に足り得る智帥 でもあると……

その時である
ハイネストの数歩前に突然 脇出る様にして 一人の闇妖狐の女が姿を現した
彼女はハイネストの横にやって来ると 片膝を付き僅かに頭を垂れた
ハイネスト「シェローゼ くわしい状況を聴かせてくれ」
馬上からハイネストは シェローゼに冷静な口調で話しかける
この闇妖狐はニ年前より自分に仕え 常に戦いの時は先兵として情報を収集し 敵陣の弱点を見つけ出してくれる需要な任務を こな してくれている
シェローゼ「敵陣は右翼に戦力が集中しております 我が軍の本陣を一氣に潰そうという考えでしょう 腕の良い傭兵や闇妖狐など ほとんどがこちらに集まっております そのため左翼は 狒々坊主 ハゲゴブリン 妖犲 コボルト 妖熊 オーガ などの下級妖怪の軍団 とかなり質的に劣っており ここから一氣に敵陣に乗り込むのがいいのではないかと」
シェローゼの報告を聴いている間 馬上のハイネストはずっと黙っていた が
意を決し リチャード以下八十八人の部下達に向かって静かに だが 力強く答える
ハイネスト「さあ 俺達の手で 戦いを詰めにいこうではないか……」
リチャードは待ってました とばかり号令をかける
「いくぞ 勇敢なる戦士達よ!!」
今まで押し黙っていた 幾多の戦いによって鍛え上げられた豪傑達は
待っていましたとばかりに 歓声を揚げつつ馬に跨った

戦乱の渦のなか ここ降魔神軍左翼 その一番の先陣部隊である狒々坊主の上位種 猩々 バズラ将軍の指揮下のもと
歴戦奮闘をしている他の左翼とは裏腹に いまだ戦いに参加できず苛立ちを覚えていた

と云うのも どうもバズラは部下に受けが良く無く 何かにつけて部下達が休息をとっているのである
バズラは苛立ちを押えながらもその場に座り 部下が差しだした酒杯に手を出した所だった

ガサッ!
と茂みで音がしたかと思うと 酔った狒々坊主の一匹が興味半分に茂みを覗き込めば
ザンッ! という鈍き音がおこり その狒々坊主の首が宙を舞い地面に転がると同時に辺りを囲むように騎馬がしげみから飛び出してきた

狒々坊主達は戸惑いつつ立ち上がり腰にしている小剣を抜く
ハイネストの標的は決まった あの中央でふん反り返っている一際目立つ奴こそ ここの大将に違いない
大将バズラ「ウガァァァー!グーゥグヴゥゥー!!」
バズラは部下達に応戦の激を飛ばす

狒々坊主の数はおよそ二百匹 シェローゼの読みでは八百 メートル 後ろに第二班がいるということだ
合流をされるとやっかいだし ハイネストは常日頃から馬の起動力を生かした各個撃破を 最も常套の手段と置き
今もまるで無人の沃野をいくがごとく 狒々坊主達の目の前に駆け寄りては 一瞬 その怯んだ隙に剣圧をたたき込む

狒々坊主の体は二つになったかと思うと なぜか大地に転がらず閃光を発しては しゅん と消えていき
ハイネストの通った場所には自然 斬り開かれし道が出来ては その終点の先にバズラを捉えている

ハイネストはバズラを一別し 馬から飛び降りる
バスラ「オッ オマエハイッタイ……」
ハイネスト「琥珀月にその人ありと云われた ハイネスト=マクベリーだ さあ 氣合いをいれてかかって来い」
バズラ「ソウキャ……オマエノクビ 一チュ デ  コノイクサガサユウスルトイウ!ナラバ……モロター!!」
パズラの耳に空を切る音がした が 氣に止めず小剣がハイネストの首元にむかって振りかざされる
パズラの剣先に手ごたえがあったような音がする
グサッ!!
見ると小剣には醜い一本の腕がささっており パズラはそれが自分のだと一目見てわかった
そして 自分の胸には長剣が深々とささっていることも……

瞬間 バズラの体は じゅっ と消滅した

そして ハイネストが周囲を見渡せば既に 遊撃隊の面々が逃げ散る残党を片付けていて 団体戦自体 は三分と立たずに決着がついていた
そして パズラ先陣部隊の進行予定だった方角に馬を翻しては 号令をかける
ハイネスト「暫く奥に進み待ち伏せをする それと各自が持ってきた 水筒の水で返り血等を拭いておけ やつらは血の臭いに敏感だ もっとも……仲間の血を察知できる範囲まで 進軍はできていないだろう 先陣部隊を壊滅させるのに 予定以上かからなかったからな…」
と 新たなる戦場へと馬を駆りてはその結果 一人も減ることなく 第一計画を遂行したのであった

パピシャス「なるほど……あの男の剣こそ破壊の剣 地呑獅刀 それを操るきゃつの腕も確か か……」
部屋に映し出された幻像の破魔法により これまでのハイネストの戦いぶりを一部始終観賞していた パピシャスは一言つぶやき自分の賢臣に視線をうながす
ドーグレッグは 陛下と自分との感想が一致していると悟りつも 口を開く
ドーグレッグ「陛下 あの男に益々興味を持たれたのでしょう?」
パピシャス「ああ」
ドーグレッグ「それに 自分自信の剣で倒してみたくなったことも」
パピシャス「…」
ドーグレッグ「眠れる闘伸 アルマラの血 という所ですか」
パピシャス「ハハッ お前には隠し事は出来ないな」

今日も一段落つき 第一番隊と第六部隊が交代の狼煙の合図が響くとこれまた疾風のごとく城に向かうも
帰路にあたりて敵がいれば責任持って冥界に送り届ける 第一遊撃隊の面々であった

ハイネストは自分の家のドアを開くのは 何週間であろうか
ハイネスト「ウェーズ いま帰ったぞ 隣のおばさんのいうことは ちゃんと聞いているかい?」
ハイネストはまだ言葉もあやふやな満ニ歳になる子供に 満面笑みをうかべて抱きかかえた 子供の方も嬉しそうに笑っている
だが ハイネストの後から入ってきたシェローゼは冷面を浮かべ ハイネストに水を刺す
シェローゼ「将軍……私に話があるというのは……」
子供を抱えたまま シェローゼと視線を合わせず答える
ハイネスト「私は 今度の戦い限りで将軍職を辞退して国を出ることにする」
シェローゼ「……! 戦いがお嫌いになったのですか……」
ハイネストは初めてシェローゼの視線に氣が付くと 目を細めながら言葉を返した
ハイネスト「戦いが好きな人間 それは人間ではない単なる獣だ……戦いに染まってしまった私には 似合わない言葉だと知っていてもな」
シェローゼ「……」
ハイネスト「これからも私には戦いという 業火が付きまとうだろう しかし これからは自分のために戦っていきたい」
シェローゼ「なぜ それを私にお話に……」
ハイネスト「お前は 私が唯一 心から信用した部下だからな」
シェローゼ「部下……」
ハイネスト「そして私の大切な人として……わかってくれシェローゼ」
とハイネストはシェローゼの肩を抱いた
シェローゼもいままで押さえていた感情が全て表に溢れ出たらしく ハイネストの手を払いのけ開けたままののドアから出ていった
ハイネストはその場で膝を落し座り込んだ
ハイネスト「詰めては 俺はもはや常人とは言い難い……大切な剣闘士時代の友ヴェルグ=ウェーブルを自らの手で殺した上 初めて愛す事が出来得る人まで傷つけたのだから…」

すると どこからともなく声が聞こえて来る


???(人というのは 感情があるゆえに 惑い苦しむもの)

ハイネスト「誰だい ノックもなしで?」


???(もっと悩み嫌悪の心を持つがいい それが我が力となるのだ)

ハイネスト「感情に乱れがあるとはいえ この俺の間合いに入ってこれる奴がいるとはな」
と笑いながら呟くと ハイネストは剣を抜きつつ辺りを見回し 敵が不可視であることを悟ると目を瞑る
そして 一番妖氣の凝縮されている地点に 右足を前に出すと同時に剣を横に薙ぎ払った その刹那 透明の空間に赤い亀裂が走り 一人の男が現れる

その姿は異形……
だが どこか人を引き付ける何かがある男だと ハイネストは心におもった

その男の体の傷は一瞬にして消え失せると 男の腰に付けていた一つの人形が 閃光を放ち消えていった
妖しき男は口を開く
???「失われし破魔法術の一つ『古式身代人形』の味はどうだね」
ハイネスト「なかなか面白いショウを 魅せてくれるじゃないか」
妖しき男はハイネストが御世辞を言ったのだと 勘違いしたらしく
???「ハハハ サインはあとで……」
と笑う妖しき男を阿然と見て ハイネストは頭の中で思った
(バカじゃねえのか こいつ……)
???「バカとはなんだ バカとは……」
ハイネスト「おっと 心が読めるのかい これは 凄い……」
男は少し機嫌を取り戻したらしく 言葉を続ける
???「地呑獅刀を手に持つ 覇軍星 ルマラ の戦士よ 我が掲示に耳を傾けるがよい」
ハイネストは こと地呑獅刀という言葉を聞くと 日頃 冷静な彼にして血が湧き騒めく
ハイネスト「地呑獅刀……あんた 俺の剣のことを知っているのか!いったい この剣は俺のなんなんだ……」
???「覇軍星が導ける 一つの軌跡……かつてお前が初めて人を殺した一六歳の時を思い出すがよい」
ハイネスト「思い出すも何も あの時から俺の心から何かがはじけとんだ あの出来事……」
??? 「お前の父 農夫ハルク=クッチャナは 暗黒神 ジョルグ=ルドラィア信仰のこの国のもと 圧政と貧困なに喘いでいた そして 鍬を剣に変え人々と供に立ち上がった」
ハイネストに驚惑の感情が浮かぶ
???「そして お前が出会った男同志の血に染まった 地呑獅刀とつかに彫られし黒き妖刀を手にした 農民反乱軍の討伐隊の隊長」
「……勝負は一瞬にしてついた その男の剣が振りかざされ お前の頭を叩き割ったかに見えたが その剣はお前の手にあり 既に相手の上半身を 一刀両断に叩き落とした後だった その現場を見ていたのが ノーザンライト=マクベリーであったという……」
ハイネストの心の隙間に入り込んでくる  蟠り で体が動かなかった すると 手にしていた刀が突然動きだし 妖しき男に志念を送った

【人の心探りて 相手の内部から破壊していく魔人……初めてという訳だ 神話の時代より在れり アルンダティラ さんよぅ……目を覚ませや ハイネスト こいつが国無き進軍部隊と名づけた お前達の敵の大将なんだぜぃ】

ハイネストの呪縛が解け 地呑獅刀に答える
ハイネスト「……! そうか それは好都合だ……」
パピシャスは 驚きの表情を出さずには居られなかった
パピシャス「そ その剣は意思を持っているのか……」


ハイネスト「ほう あんたにも こいつの言っている事がわかるのか?少し親しみが涌いてきたぜ」
暫く 渇いた沈黙が続く
やがてパピシャスの方から口を開き
「ハイネストとやらに聞きたい 我はこの大陸に君臨し はや四十六億渡歳
意のままに殺め 意のままに食い 意のままに奪い 意のままに趣く
人は我を魔王とも 英雄 ロード とも讃え畏れられている
が 一向として 心が満たされない 満たされないのだ?
それを敵であるお前に 問い掛けてみるも一興…」
ハイネストは解った 奴の正体が
人が生きているならなら誰もがもつ 果てしない 欲望 を追求する心の化身
ただ 人の利害によって 悪魔だとか神とか言われてるにすぎない
俺も戦いに飢えている獣 こいつの側にいたら 結構いい目が見れるかもしれないなと
ハイネスト「悩むことはない 満たされるまで戦えばいいのだ」
パピシャス「獣だな」
ハイネスト「互いにな」
パピシャスの口元に笑みが漏れる
そして視線を落し この魔性には不釣合いなほど美しく 悲しい声色で歌を歌い始めた

それは親なき始源の赤子  初めに瞳に写りしもの
それは神々の戦い

それは親なき無敵の兵器  初めに瞳に写りしもの
それは文明の暴走

それは親なき伝説の魔神  初めに瞳に写りしもの
それは限られた者達の幸福

それは親なきただの人間  最後に瞳に写りしもの
それは人々の剣撃

と 謳い終えると幾闇を卒する筈である 覇王者の瞳から 何か が零れた

ハイネストはそれが涙だと解ったが 魔性の者にも痛みがある ということを受け入れるには数秒を要した
その涙が頬に流れていく刹那 すっと 雫は消えていった

パピシャス「…不安定を生じてしまった 今の私ではお前を倒すことはできまい故 後日を楽しみにしておけ」

と言って パピシャスの体は消えていってしまった
ハイネストは命の恩人である 地呑獅刀に向かって一言礼のような事をいって 小一時間前から誘っている 睡魔の導きに従うことにした

ハイネスト「しかし お前はよくもまあ眠っていられたもんだな・・・」
ハイネストはベッドですこやかに 寝息をたてているウェーズ=ウェーブルに愚痴をこぼした
が 今度は彼の将来を透視する様な 眼差しでウェーズを見つめる
ハイネスト「俺は正道を捨てることに決めた 義子よ……言い訳は 煉獄界 カマロラ で聞こう 俺は命の灯火が消え失せるまで 奴と供に同じものを見ていたくなった 真の見えざる敵という奴を供に見たくなった 無駄なこと愚かなことがけっこう 好きな俺としては……」
ウェーズの口元が動いた 微かに笑ったのだろうか?

ハイネスト「そう解ったのか? 心打たれた というという訳だ……」


翌日 ビクトラウト城に一つのの早馬が届いた
ギルファー\世はその手紙の封を切り内容を読むと 二五人の将校達を招集する

とくにハイネストを近くに寄らせては 直に話を持ちかけ ギルファーが話を終えると ハイネストは頭を上げて返答する
「と 仰いますれば 奴は本拠地である 自分の城内での決着を望むと……」
ギルファーW世「向こうは 自らの手で決着をつけると言っておる 当から数をぶつけても勝てはしないのは承知だった……この件はお前の返答次第という訳になる」
とギルファーはかつての剣闘士の覇者を しわが寄った細目で見つめる ハイネストは肩膝をつき 左手をやさしく胸当てに置いて「私に全ておまかせを」といった
そのときのハイネストの瞳はまさに吹雪の地に立つ 氷狼のように冷ややかであった

ギルファーはハイネストの手を取り 縋りついた
ギルファーW世「わしは国を失いたくない……死にたくはないのだ……」
ハイネストはその手をとり 静かに君主に話しかける
ハイネスト「国主が弱氣になられますと 私達臣下は生きた心地がしません お立ちになられて下さい その上に陛下私が勝った暁には……」
ハイネストの進言に ギルファーは自分の王としての立場の重さを認識する
ギルファーW世「……わかった いいだろうハイネスト……期限まで一日ある それまで体を厭え」
ハイネストはそれらしい応対をすると 静かに立ち上がり 謁見の間を出ていった ギルファーはその後ろ姿を見送ると 一言つぶやく
ギルファーW世「この戦 余にとって勝敗に関係なく 一人の勇臣を失ってしまうのか……」



そして 勝利の軍配はハイネスト
……いや一人で立ち向かおうとした勇者に心打たれ 何処となく現れた謎の一行
純白の鎧でかためた 地を操る杖を持つ長髪の騎士
清き泉の色の外套を纏った 水を操る壺を持つ上位僊兔
まだ年端も行かぬが おそるべき霊力を秘めた 風の指輪を持つ子供
この四人が 強大な力を持つ魔王との長きにわたる激戦の末 勝利をおさめたと噂されている
なぜならハイネストも含め その後の四人の消息は誰も知らなかったが故に
一人の男が 覇軍星 スマラ 闘争星 アスマラ へ代わり 覇軍星は義理の息子へと受け継がれる
その瞬間に……


第三楽章「お笑い詩人 ミランとシリア誘拐」
「ね〜ね〜そこのお姉さん 住所とお名前は〜」ミラン=セル

邪と我に連なる島 邪我蛇餓異喪忌魍 ジャガジャガイモイモ 島 公式名 密甘楼園 イムジャガール 島の 橘蜂 ハニキラ
陰の 女神 くろひめ ア=クゥァァク=クゥェイ=ヌゥェエ=ウィラ 称し カーク=カイネイラを信仰する
女教王にして島の 頭領 マレギナ クゥァナ=クゥァラ=ヌゥェエ=ウェラ=ウ=ウェ
称し カカナゴスU世をとり囲む 侍女 アマゾニス

そして女王の前に跪く 頭巾付きの黒外套を纏った 小柄な破魔法使い風の女
カカナゴスU世「あのお方はいきなり わらわの城に駆けつけたと思えば 不愉快だ 寝る なぞと言われて 奥に引き込まれたままじゃ 母上から聞いておった恐怖の伝説にしては どうもあの方は少し稚拙な氣もするが……まぁあの者達によって これ以上その御心を痛まれぬよう一応 貴方 ぐらい を送ってもいいでしょう 忌める 狐人 ハーフエルフ サディよ……」
サディと呼ばれた黒き外套の女は 黙ったまま出ていった


ここはスルードの街とある酒場
???「……まぁ あの女には借金があってね」
???「そりゃないっすよ〜 師匠」
とチラチラ奥のカウンターをかいまみる
???「ははーん あれが伝説の黒の断頭台ね……」
奥の黒き外套の少女はミランに微笑みかける
???「たかだか田舎男爵一人 軽い軽い」
と 言って妖兔は 公衆浴場 セントウ から出てきたタナカを踊らせる

ミラン タナカを他の酒場へ移動 【 繰返 リピート 】の呪魂歌をかけたあと変装 各人を個別に呼ぶ
それをサディが各個撃破していき 戦力を削ぐ作戦

リスティ VS サディ
一R サディ 『古式隠透身』の詠唱
ニR サディ 近距離で リスティの腹部に『古式炎爆球』
リスティ ふっとんで 建物をニ 三件破壊
三R リスティ 起き上がって
「これは驚きましたね」
サディ「えっ?」
リスティ「あ これはどうも 黒の暗黒魔法師さん いや〜 噂に違わぬ外道ぶりを発揮してくれますね『古式身代人形』がなければ死んでいましたよ では お返しに『古式極酸青雲竜』」
とサディの周囲を円形に溶かす
リスティ「あ 氣をつけて下さい ここら辺り地層が薄くて何時 溶融した 灼岩流 マグマ が噴出すかも……」

サディ『古式転移』を詠み唱え 退却

リスティ「まあ 私なりに霊力を押えときはしましたが……たしか現在 彼女は邪忌魍島の一員…と云うことはやはり 陛下 の仕業ですか……」
リスティは深く溜め息をつき 今 自分の置かれている状況を把握する
リスティ「あの 夜装 ナイトモード は目立ちますが……着替えますか」

リスティは眼鏡を外すと その碧き双瞳は怪しくも優美な潤いを帯び 錫杖に向かって パチン と指を鳴らせば黒色の羽織に変化する
おもむろに その羽織を纏い全身を覆うように ばさり と翻すと 今度は着ている衣装が貴族風の礼装に変化する
頭部の 御下げ は溶け 優雅に茜色の美髪を靡かせながら 背中からは黒き翼が突き出つつ リスティは空へその身を浮遊させる
そして『古式拡透視』と呟きこう言った
「おやおや これはこれは」

そこには
リューク VS サディ
一R サディ 『古式浮跳身』
リューク 吠える
二R リューク 弩をとりだす
サディ 『炎王烈波流』
三R リューク 弩をセットする
   サディ 『雷帝爆炎域』
四R 氣にせず リューク弩を巻き始める
サディ 『熒神雷帝渦』
五R それでもリューク 弩を巻き続ける
サディ 『緋月公主熒龍燼渦』
六R リューク 巻き完了
サディ 退散
サディ「取り巻きがあんな猛者だったとは……それを統べるシリアって一体……この仕事や〜めた」

そして この破壊魔法の影響で リュークの居た直径三米の地は 深く半球に抉りとられて焦土に

実はシリアは この爆風で氣絶している クサナ しめたとばかし
「これを魔皇陛下に届ければ 沢山の報奨金が
しか〜し 背後には 筋肉質 マッチョ な兄さん達の影が……

ある酒場にて タナカ踊る踊る そこに黒き羽織と衣装を纏ったリスティ登場
五指に填められている鋭利に研がれて明らかに殺傷用と解る 義爪 をミランに向ける
リスティ「やめなさい……不毛 もとい 不老の詩僊 ミラン=セルよ」
ミラン「……この裏切り者ぉ〜……それに違うなっ そのあまりにも素晴らしき才能に 万の神々さえ死の宣告をためらわす さ迷える薄幸の美青年 恒久の二十歳 ミラン=セルだ」
と言いつつ パッ とやめる

リューク「お前 何やってたんだ」
タナカ「???……解らない……でも……踊りたかったんだ」
リューク「はっ?」

リスティ「……呆れました 色の為には闇にも ける訳ですか」
ミラン「まあねっ!時に夜の低能」
リスティ「なんでしょう 吟遊恥人さん」
ミラン「なんだ……その…十年後にでも期待してるのか アレに」
リスティ「……恐いことを言わないで下さい それならばまだ今の方が……」

リスティ ミランに耳打ち ミランの顔から血の氣が失せる

ミラン「おいおい 冗談じゃない……でも これで全ての謎が解った」
リスティ「何のことです」
ミラン「いや何でもありませんよ ただ

 贖刳(ルフリス)は 応(マオウ)の歪血児

それは  いまだ を知るが故

すなわち 闇に忍ぶる 彼の魔瞳

心 と 想い と  揺々 ゆらゆら

時折重ね 次代へ紡ぐ

ってね……」


リスティ「変わっていますね 詩人とよばれる人たちは……あ そうそう依頼主は逃げ 妖兔 リョースエルフ さんは 別件でさらわれていったのですが」
ミラン「え゛っ!?」

一シーン 武装したリスティ 光を全身に照射され その身が崩壊しながら
?????「……私は心底嫌でしたよ あんな バケモノ を……」


リューク タナカ リスティ(+ミラン)でシリアの救出

おう 結構二人組 強い でっ ミラン先回りして シリアに近づく
「!まてよ……」
ミランの瞳が キラリ と光る
ミラン「……よしっ 今がチャ〜ンス! シリア お命頂戴!!恨むのなら その色氣のなさ と  寸胴 ズンドウ  と えぐ れた 盆地胸 を恨んでおくれ〜」
シリア「む゛ぅ!?ままみま゛っめももまみまめま゛……メムミーミ」
ミラン「あっ……それは 無理無理」
と言いながらナイフをシリアの喉元に チクッ っと当てがう
シリア「む〜!む〜!」
ドカ ドカ ドカ ドカ という足音
徒党 パーティ の到着
リューク「おう 大丈夫か」
ミラン「お嬢さん 怪我はないかい」
シリア「……」

どかっ!!

シリア「いったい なんなの?コイツ!」
リスティ「どうしたのですか まさか ナンパするにも値しない 女としては認められない よって生きる価値がない とかで殺されかかったのですか?」
シリア「……」

どかっ!

ばきっ!

めしゃ!!

シリア 救出

無論 タナカは そそくさ と街を出ていくのであった
ミラン「いや〜 師匠に破門にされちゃいまして」
シリア「……これからの人生 覚悟しなさい」


使者「……と言うわけで その首打ち損じた次第に……」
魔皇 卒倒
一同「陛下ぁぁぁ!!」




第四楽章「夜行乙騎」

「我は正義なり」タナカ=ブレイハルト


ダ−−−−ン

ひゅっ カツーン−−

ひゅっ カツーン−−

ひゅっ カツン


(……ナブルのは ここまでにいたしましょう)



シャッッッ!!!

 ドサッ


(フフ……恐怖に浸りきった その恍惚の 醜面 しにがお ……イイですよ……)


コッ ぽた
コッ ぽた
コッ ぽた
コッ ぽた

コー

ぽたぽた

(……)

フゥォッ チャキーン


コッコッコッ−−
ギィィィィ−−
バタン

季節は秋深し 今回の依頼人の場所 ハネケン へ届くのに約二十日かかる
それでも今度の依頼人は この街の領主自身で高額報酬が期待される

ミラン逃亡 そして行く先々の酒場で ミランという軟派詩人 の噂が絶えず耳に届く

とある依頼先の町の酒場 ミランが若いお姉ちゃんに言い寄るのに夢中で シリア達一行に氣がつかない様子
シリア「いきなり 『閃光乙精 光条鞭!』」
ピシィー!!
ミラン 「うぎゃあ!」
シリア「ご機嫌いかが?ミラン…」
ミラン「や やぁ 奇遇だね」
お姉ちゃん「ちょっと この人だれ? まさか 彼女とか言うんじゃないでしょうね」
シリア「呆れた そうやって旅の先々で女の人を 口説いているのね」

ミラン 逃亡の体制に入りながら
「おいおい これがボクの彼女だなんて 生涯最悪最凶の冗談だね  これと付き合うぐらいなら まだ 吸精姫とダンスを踊る方が 色氣も……ぎゃふん!」
見えない壁に突き当たる
ミラン「いたたっ!これは『嵐王下風壁衝』 タナカぁ〜!」
タナカ「(酒場の外から)我 勇なき逃亡を見逃すに絶えず」
シリア「そういうこと『風乙女よ この阿呆を縛って 風織縄 エアリアルロープ !』」
ミラン 「痛い痛い痛い!! この ブス! ドカン! ペチャパイ! 色氣なしのチビガキ!」
シリア 「(むかむかぁ!)えい!」

びしっ!!!

ミラン 「う 嘘ですっ!!(ばし!)ほんの(ばしばし!)……おちゃめです(げしぃ!!)
シリア 「はぁ……あんたはそうやって 行く先々で有名になるほど口説き回ってるみたいじゃない」
ミラン「でもナンパが悪いのなら リスティだって同罪でしょう どうしてボクだけなんですかぁ?」
リスティ「私は将来の幸せを真剣に願い 逆玉の輿にのるため 身分高き 令嬢 にしか愛を望みませんから」
と言い終えながら酒場のマスターに 他の冒鋒酒宿からの仔細状を渡す
シリア 「まっ 貴族連中から 時々高額な仕事をもらったりしてるし それなりに考えのあってのことみたいだから」
ミラン「くっだらなーい 僕はその場の思い思いに遊らぐ ただの趣味人でありまス故に」
シリア「だから 節操がない」
ミラン 「ボクは 自由恋愛をしているの それをどうして いーっつ も邪魔をするの?はっ…ブルル…ひょっとして ジェラシー……」
どごすぅっ
シリア 「アホ!私も ただの暇つぶしの趣味だから(きっぱり)」

ミラン 口説いていたお姉ちゃんに うるうる な視線を送るが
お姉ちゃん「なんか 格好悪〜い」
と酒場をそそくさ とでていった
ミラン「僕は叫ぶ これは夢だ しかも あ〜く〜む〜だぁ〜!」

依頼主 女領主 ファーラム皇国南部マグダル州 領主ヴィーナ=ロレイン子爵
ミラン アプローチする が 軽くあしらわれる

内容  彼女の妹婿の兄弟達(五人)の命が ある妖怪に狙われている 半年毎に指名していき 過去三人 殺されている

タナカ「そうだ 奴らを倒すには 聖天大帝が御雷降の力こそ大切なのだ」

もう一つ ヴィーナから仕事を頼まれる
屋根裏部屋の物置から古書が 沢山出てきたらしく 誰でもいいから翻訳できる人が欲しいとの事
自然 リスティに決まる
リスティ「まぁ……『古式解読』と『古式転写』がありますから時間は大きく省けますけど」
ヴィーナ「なら 明日まで全部お願いね」
リスティ「は?……はぁ」

他の者はこの街で支度を整え 屋敷に泊めてもらう事に
一人は同じ屋敷でも 屋根裏部屋で徹夜の作業となるが

夕食は皆を囲んでディナー わいわい と賑わう中 リスティは屋根裏部屋で 食パンをかじりながら古書の整理
お約束で本棚が倒れリスティ下敷き 何とか這いあがって 本棚が立てかけていた壁に一つ絵画を発見 リスティは無言で暫く見つめていた が
「……なるほど これも数ある 氣まぐれの名残ですかね」
と自身の千歳を紡ぐ 記憶の破片を確認しながら微笑った

そして翌朝 出発 今回指名のあった街の貴族屋敷に行くのに また十数日かかる

ここはとある草原 この場所からなにか音が聞こえてくる
それは 風乙女 シルフィド 達が 遠くの草原から奏でる旋律 物質界では 風の音 と呼ばれるものである

普段 この地にはこの風の音しか聞こえない 見渡す限りの広野の筈
しかし そこは今剣撃の高々しい鋒音 破魔法による爆音に包まれ 一体が巨体の怪物が姿 六つの火蜥蜴 もとい 人影があった
???「残るは あと 多臂傀 ヘカトンケイス という 角傀 ゴズ だけ 戦いばかりでダレているけど みんなこれが終われば…って…リスティ!そこで傍観者してどーするのよ」
巨傀を目の前にして疲れた双膀を 右人差し指でこすっている優男を 年格好十ニ 三歳位の妖卯の娘 シリアが声を張り上げ注意する

まずはその少女の容姿に驚かざるえない 少女は腰から 怪しげな鋭さを思い浮かばせる小刃の剣が吊り下げていて それは単なる 無機質 ひややか 装飾品 おかざり である筈なのだが しかして 何やら 大いなるもの からの睨み特有の畏怖と存在感を醸し出しては 垣間見るものに無言の威圧を与えている

そして たとえ様がないほどの輝きをもつ金色の髪  そこから突き出ている二つの繊細な耳
妖兔 リョースエルフ と世に呼ばれている種族であることは承知である
???「お嬢ちゃん おっといけないシリア 時として人は休息を欲する時期があります そう今の自分がそうでありこれは他の幾たるものといえど…… 」

とごねる破魔法使いの優男の頭に一発 がつん と強い衝撃が来て その場に ススズー と崩れ倒れていく

シリアが誰だろうと目を凝らした
その うずくま る優男の後ろから 氣性の荒そうな蛮族風の青年が現れる
戦士と見られるその鎧は髪の色に合わして赤であり 体格は ものゴッツい
その戦士は声を出す間もなく 伸びているそのやさ男の襟首をつかみ強引に吊り上げこう叫んだ
???「ふ ざ け ん なリスティ!! 何時からそんなこといえる器になったんだ そんなに このリューク様に その青っ白い顔つぶされてーのか! いやなら早く 俺の剣に火を付けろ!」
ムセながらリスティと呼ばれた 優男の破魔法使いが口を開く
リスティ「だから それは古代破魔法の『古式炎剣撃化』といって」
リューク「うるせえ!用は火が俺の剣に付きゃいいんだ!」
リスティ「ハイハイ リューク 呪文を詠み唱えますので 私の身を自由な状態にしてください 氣の集中がいりますので」
そう リュークと呼ばれる 後の世に謳われる 西大陸の六大戦士は ぱっ と手をはなす
リスティ 尻餅を突きながら
リスティ「お約束ありがと では『古式の星霜 降り座す理 かの戦士が撃剣に 憤る雷巨傀の心 破壊の象徴たる 炎の舞を与えたまえ!』」
(本来の)真剣な表情で古妖精語で奏でられし 得意の間接破魔法を唱え終わったあと
リュークの両手持ちにもなる 蛮剣 バスタードソード に炎が上がる
もう すでに敵は唸りを上げながら
迫る
迫る
迫る!!
では リュークは何時ものように
リューク「これでいい やいそこのバケモノ! 来いや 来いや くぉいやぁー!!」
タナカ「ちょっとまてぃ 私を無視すんな この プラタニティ=タナカ=ブレイハルトを!」
リューク「タナカぁー!! てめーは 俺に傷薬でも飛ばしてりゃいいんだよ!」
タナカ「なんだとリューク 私の聖なる癒しの星霊殿破魔法を 只の傷薬だとぉう!?ぢょうだんぢゃない 私があの 多臂傀 ヘカトンケイレス を倒す」
リューク「俺があのヘカトケ……とにかく倒す!!」
タナカ「私だ!」
リューク「俺だ!」
今まで沈黙していたシリアが 瞳に炎を浮かべて一言
シリア「やめなきゃ キレるよ」

ヒュルルルルルル
ここで 徒党 パーティ の中に 一時の友好条約が平定され 各役目ごとに 戦い という ノルマ を処理していくのであった
ここで 一番の傍観者だったミランの一句
巨傀 ギガス より チームワークの乱れより
キレたシリアが 一番恐い


リスティは途中 街で聞いた噂の唱歌をそら詠む
「それは 狂々笑 うたた 蝕魂 ナラク  の 呼魂 コダマ

失って わら いなさい 清く澄んだ おのれ

虚実 カガミ を見なさい 美を ぎ 理性の柵をへし折り

絶望の家に 滅びの扉を叩き訃げし 目の前の 妖鬼 わたし

失って めざめ なさい 醜く歪んだ自分の 首級 さだめ

そして 貴方 ワタシ 逝きなさ ユルサナ

それは 飽くなき

常乙 とわ 騎士 はいじん 報呪唄 ムクイウタ

ミラン「まだまだ だな」
リスティ「はい 私は 貴殿の唱える 吟詠の真髄 にはまだ遠く及びません」
タナカ「まぁ ミランの歌の噂はともかく 主の歌なぞ 実際一度も聞いたことがない訳だから何とも云えんのう」
一同 深くうなずく
ミラン「本当のいい歌を理解出来ない人たちになぞ 聞かせる歌がないだけさ」
シリア「そう?自然と広まる歌 それがイイ歌なんじゃないの」
ミラン否定とも肯定ともとれる様に フッ と微笑う


その予定の街に到着 一旦思い思いが買い物をすませ 酒場に集合
しかし ミランは来ない
まあ いつもの事だからほっといて屋敷に向かうことにした

ミランは またもや 徒党 パーティ を抜け出し 今度は来た道を反対方向に逃げていった

して日も暮れた頃 ふと ミランが後ろを振り返る
誰もいない
首をかしげまた歩きだす
やがて ミランの背中越しニ 三十 メトル 付近に 青白く朧な馬戦車が ぼぅ と現れ
シリアとその一味のいる街へ車は動き始める

その夜
VS モード
馬戦車を使うので攻撃がし辛い おまけに従幽鬼が馬車から弓矢を打ってくる
タナカ『雷帝の銘の許 土伯御卿に奏で訴う 栄光に……癒えぃ!』
と半ば氣合いじみた 癒しの星霊殿破魔法を唱える
リューク 車輪の留め金を弩で狙い 破壊
従幽鬼 ワイト の空への逃亡を謀ろうするよりも早く
タナカ『雷帝の銘に於き 奏で訴う 邪よ 裁きの光に散るが良い 邪鬼退散 ターンアンデット !』
従幽鬼は 黄金の炎に包まれながら消えていく

夜行乙騎 デュラハン の首が 突然 リュークに飛んでくる
タナカ『雷於剣撃化!』
タナカの掌が一瞬光り リュークの剣が光を帯びる
リュークは刃を立てずに 平の部分で 夜行乙騎 の顔面を ぶっ叩いた
リスティ「日ごろは闇を跳梁し 人間の恐怖を 侵攻 インベード する 魍魎供 スペクターズ  も 光の神徒の前では 風の前の塵に同じ ですね…」
シリア「フーン でも まだあれは動いているみたいだけど……」
夜行乙騎 すぅ と剣をかざしながら シリア リスティの後衛陣 に ゆらり と向かってくる
すると どこからともなく ミランの 鎮魂歌 レクイエム が流れる
夜行乙騎 安らかに崩れながらも ミランに顔を向け ふうらり と手を掲げる
ミランは歌いながらも 微笑みを返す

シリア「しかし 顔が離れているのに どうやって歌が聞こえるのかしら?」
ミラン「亡魂とは 大地に這う闇の迷い子  ボクの歌は 夜行乙騎 といえど 霊魂そのものに強く響いてしまう程 至高の領域なのさ だから ほら 今ので懐かしき 故郷貴殿の兄弟たる魍魎供の集う 永劫の闇に帰りたくなったでしょうタナカっぽん」
といって ミランは脱兎 タナカ 抜刀し追撃
リューク「それは強い奴等がおる所か?だったら俺も連れて行け〜!」
とリュークも又 二人を追いかける

リスティ「ふぅ」
シリア「だめだ こりゃ」

ハネケンへ戻り 報酬の半分を受け取ると またヴィーナの屋敷で歓迎を受け 今夜は泊まっていくように進められる

皆が旅の疲れにて 個室で深き眠りにつく頃……
ベッドに腰掛け足組みをする ヴィーナ
向かい合うリスティ
リスティ「ご冗談を……私は貴方の様に 某大国の元騎士なとどいう 高貴な血は持ち合わせていませんよ」
ヴィーナ「理由?そうね……知的 で ハンサム で 家事が好きだから 婿にしてあげる」
リスティ「……理想ですね 私を必要としてくれているのですから……喜んで受けましょう 愛 などという まやかし に刈られない束縛を……」

リスティ 片膝ついて ヴィーナの足の甲に口付けをする
ヴィーナ(とうとう見つけた……我が一族の人化の恩祖 降魔神軍近衛隊長リフィラム  かつて魔戒に於いては 最下級に位置する私にとって 雲上の御主人様……)


その昔 北よリバレストなる ファーラムが将軍 が立ち挙がりて
南にデルトック王つ国興さんと 近隣が妖怪狩りを行うものなり

さる 水妖精 スレイエン 族が 北方に逃がれんとはかりしも
人が御魂に 間にあい入れず そは 二国が挟み合い邑が滅びを待つものなり

やがて時を経 彼は何処のもの 其れは西大陸より来たれる 蛮徒の群れが
かの地 マグダルト に 挙りて来たり

両国 二 三万が死屍 ひいては 水妖族が魂火
皆 西の蛮勇が兇刃にて 皆 悉く絶ち亡びにけり

マグダルト州「西の蛮なる猛者が群れ」伝奇より




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